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「あ、カフェだっけ? そこ絶対に私も行くからね! で、奥さんなんだけど、お嬢さんの顔のケガの事、ここに来る前から気にしてたのよ。お嬢さんが殺された時、警察に呼ばれて遺体を確認した時に見てしまっているからねぇ。それで奥さんに治し方教えてあげたの。娘のケガを治したいという強い気持ちを言霊に練り込んでもらって、ついでに内緒で私の霊力投げ込んでおいたから、ふふふ、唱えてくれたら一発で治っちゃうよ、ほら、いよいよ、奥さん唱えるみたい」
僕と先代は、ぎこちなくも言霊を唱えようとする奥さんに目線を移した。
なにはどうあれ女性が顔にあんなに酷いケガを負っているんだ。
それが治るなら、しかも治してくれるのがお母さんなら、他に何もいう事はない。
『貴ちゃんは1人でよく頑張ったね、えらかったね……お母ちゃん、一番辛い時に助けてあげられなくてごめんね……でもこれからはお母ちゃんが一緒だからね。さあ、ケガを治そう。貴ちゃん、そこに座って。ええっと……いくわよ』
うん、と小さく頷いた田所さんはぎゅっと目をつむり正座して、まるで小さな子供のようにお母さんのエプロンを握りしめている。
お母さんは田所さんの潰れた顔を両手で優しく包み込んだ。
そして、少し恥ずかしそうに、でも、真剣にこう唱えた。
『痛いの痛いの……飛んでいけ、痛いの痛いの……飛んでいけ、痛いの痛いの……』
あ……
お母さんはこの言葉を言霊に選んだんだな。
僕はささやくような優しい声に懐かしさを感じていた。
昔、僕が小さかった頃……遊んでケガをして家に帰ると、母親もよくこう言いながら傷の手当をしてくれたっけ。
母親は元気でやってるんだろうか……?
落ち着いたら、たまには実家に帰ってみようかなぁ。
そんな事を考えながら二人を眺めていると、言霊を唱えるごとにお母さんの手のひらが反応し、徐々に白く眩く光り出した。
『あらぁ、あらあらぁ、なにこれ、きれいねぇ。それになんだか温かいわ』
お母さん曰く温かいその光は、速度をもって輝度を上げていく。
やがてその光はお母さんと田所さんの輪郭を消す程に輝いて、その眩しさに目を開けていられなくなった僕は手で目を覆い蹲ってしまった。
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