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やっぱり格闘家だったのか。
あの身体は鍛えてなければああはならない。
僕は妙に納得しならよろしくお願いしますと頭を下げた。
「岡村君だったよね? こちらこそよろしく。先代から話は聞いてたけど君スゴイねぇ!」
先程の凝視から一転、満面の笑みだ。
「えっ? 何がすごいのでしょうか……?」
「いや、握手だよ! さっき先代としてただろう?」
「はい、してましたけど、それがなにか……」
「昨日、先代が話してくれたんだ。『私の姿が見えて、話せて、触れる男に会ったよ!』ってね。並みの霊力者では霊体に触る事はまずできない。なのにさっきの熱い握手は“触れる”程度のレベルじゃない、完全に物体として捉えてる。たいした霊力だ。なぁ、岡村君。君の目に先代はどう映っているの? 半透明? それともはっきり見えてる?」
「えっと……半透明ではないですね。生きている人と変わりなく見えます。だから昨日もいきなり消えてしまうまで、ハローワークの職員さんとばかり思っていましたから」
「ああ、そう! そうなの! 生きた人間と見分けがつかないくらいはっきり見えちゃうんだ! こりゃスゴイ! ちなみに俺は、はっきりとは見えるけど身体の輪郭に陽炎のような揺らめきがあるかないかで判別してる。揺らめいていれば霊体だ。おそらく岡村君は今までも霊体を見てきたのだろうが、生きた人間だと思って気が付かなかったんだろうな!」
ツルツルスキンヘッドの格闘系霊媒師、清水社長が熱く語る中、先代が得意気に話に入ってきた。
『どう! 清水君! すごいでしょ? すごい子見つけちゃったでしょ!』
「はい! 予想以上です! もう俺、絶対岡村君を離しません! こんな子、余所に取られたら、とんでもない商売敵になりますよ! さあ、先代! 彼に逃げられないように、さっさと入社手続きしちゃいましょう!」
逃げられないようにって……
僕は思わず笑ってしまった。
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