第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「呪いの方法を読んだ時は、ただ怖いな面白いな、本当に効果あるのかな、くらいにしか思いませんでした。だけど……夫がるりに告白した事があると聞いた後……どうしても怒りがおさまらなくて。夫を責めようにも酔いが醒めた次の日、何を話したのか覚えていないと言うし、姉は私に気を遣うし、惨めで情けなくて……そんな私を見た母が、2~3日双子を預かってあげるから少し休みなさいって言ってくれたんです。もちろん、詳しい事情は知りません。ただ、私の顔が疲れてるからと心配してくれて」 旦那さん、本当に覚えて無かったのかなぁ、怪しいなぁ。 ま、覚えてないって言った方が話を広げずにすむからねぇ、これまた確信犯かもしれない。 本当はさ、「そんなのは昔の話で、今はキミしか愛してない」とか(キャー!)言ってあげたらベストなんだけど、日本の男性でそれが言える人はきっと少ない。 どうしても照れが邪魔をしてしまうからね。 そう考えるとウチのマコちゃんとジャッキーさんはすごいな。 照れとか関係ないもん、ガンガン愛情表現するもん。 「双子を母に預け、夫は友人達と出掛けてしまって、私は家に一人になりました。……久しぶりの自分の時間、だけどどこかに出掛けるのも億劫で、なにより頭の中は高校生だった夫がるりに想いを寄せていたコトでいっぱいで、なんて言って告白したんだろう、るりはなんて言って断ったんだろう、夫が私に付き合ってと言ったのは、そこから随分後の話だけど、やっぱり私は身代わりだったのかしらって……落ち込むばかり。結局モヤモヤして居ても立っても居られなくなって、実家に、るりに会いに行ったんです」 行ったんだ……! でもさ、お姉さまだって高校生の頃の告白話を持ち出されても困るよね。 って……そんな事、斎藤様が一番よく分かってたんだろう。 それでも会いに行かずにはいられなかったんだ。 「連絡もしないで行って、るりは居ないかもしれないって思いました。だけど、いたんです。姉の部屋に入る前、誰かと電話をしている声が聞こえました。『なんであんな余計な事を言ったのよ! みどりがかわいそうじゃない』って。ああ、夫と話してるんだなってわかりました、」 そこで言葉を止めた斎藤様の目は真っ赤だった。 唇が震え、涙を堪えてるように見える……本当は話すの辛いんだろうな。 「怒りでいっぱいで、私は部屋(なか)に入って姉に飛び掛かりました。馬乗りになって『バカにするな!』って泣きながら髪の毛引っ張って、部屋の中めちゃくちゃにして……そのうち騒ぎに気付いた母の声がして、事情を聞かれるのが嫌で逃げだしました。その時、最後に何か嫌がらせをしてやりたくて、姉が大事にしていたクマの縫いぐるみとテーブルにあった化粧ポーチを奪ったんです。うんと困ればいいと思いました」 クマのぬいぐるみはともかく、化粧道具って奪われるとそんなに困るものなのか……? なければ1日くらいノーメイクという訳にいかないの……? じょ、女性って色々大変だな……!
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