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____ルリガイナクナッテヨロコンデイルンダロウ?
「地響きを思わせる低い声。それが背後から聞こえて、あのクマだ……るりが大事にしていたテディベアだって思ったら、身体が震えて振り向く事も、その場から動く事もできませんでした。るり……あのクマを本当に大事にしていたのに……私はそれを知っていたのに、勝手に奪ってハサミで腹を裂いてしまった……私は……心の醜い人間だわ……」
その日の夜は、結局最後まで振り向く事は出来なかったそうだ。
クマは背後から、一言発するたびに距離を詰めてきた。
振り向かなくても、目で見なくても、斎藤様にはそれがわかった。
曰く、空気が動くからだそうで、クマが歩くたびに空気が流れ、土の匂いが強くなるのだと言っていた。
____ミドリガ呼ンダンジャナイカ、
____ナノニ、ドウシテ置イテカエッタ、
____続キヲシヨウ、
____ルリヲ呪ウノダロウ?
____チカラヲ貸シテヤル、
____アソボウ、アソボウ、イッショニ遊ボウ、
____ルリデアソボウ、
____怖イノカ?
____ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラッ!
____アソボウ、アソボウ、イッショニ遊ボウ、
____フタゴデ遊ボウ、
____モウオソイ、テオクレダ、
やめて、ごめんなさい、私が悪かったから、許してください、
斎藤様は震えながら何度も謝った。
だが、聞き入れてはくれなくて、謝る言葉に被せるように『アソボウアソボウ』と繰り返すばかり。
斎藤様は途方に暮れた。
どうしていいか分からない。
だから聞いたそうだ、どう謝れば許してくれるのかと。
____ユルス?
____呼ンダノハミドリ、
____オレハ呼バレタ、ダカラ来タ、
____ミドリガ望ンダ、ルリノ不幸ヲ、
違う……!
本気で望んでなんかいない!
るりが不幸になればいいなんて思ってないわ!
私はただ、
____タダ?
____タダナンダ?
____呪ッタクセニ、オレノハラヲ裂イタクセニ、
____スゴクイタカッタ、
____イマダッテイタイ、
____裂イタ……傷ニ……ルリノ……髪ト爪……イレラレタ、
____イタイ……イタイ痛イ痛イイタインダヨォォォォッ!!
____モウオソイ、テオクレダ、
____呪イハハシリダシタ、
ああ、ごめんなさい、私がみんな悪いの、
お願いです、私とるりに酷い事をしないでください、
本気じゃなかった、興味本位だった、鬱憤晴らしのつもりだった、
二度としません、だから、許してくだ、
____ユルス、許ス、ユルス?
____ダレガ? ダレヲ?
____許スノハダレ?
____許サレルノハ誰?
許すのは誰なのか、許されるのは誰なのか。
そう問われた次の瞬間、斎藤様は悲鳴を上げた。
背後から、重たいナニカが首の後ろに飛びついて、強い力でしがみつかれ、そして、
____ゼッタイニニガサナイ、
呪いの囁きを聞いたのを最後に気を失った。
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