第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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(らん)さんの意外性を垣間見た所で、僕と(らん)さんとで手分けして、林の外周に人避け人形(ヒトガタ)を刺していく。 土地が広いからちょっとばかし大変だけど、キーマンさんの言う通り、用心に越したことはない。 物理的な針の代わりに、霊力(ちから)で構築した霊針で固定してまわるのだが、キーマンさんが一緒に来ないのは、彼の霊力(ちから)は探知に全振りなので霊針を構築する事が出来ないからだ。 だけどそんなコトは問題ない。 霊媒師それぞれ持ってるスキルが違うんだもの。 出来る人が出来るコトをすればいい。 しかし……前回同様、人形(ヒトガタ)を地面に刺すたび、恨めしそうな呻き声がして気が滅入るよ。 いつも思うけど水渦(みうず)さんの負の感情、マジパネェ。 とかなんとかブーブー言いつつ、僕も(らん)さんも全ての人形(ヒトガタ)を刺し終えて林の入口まで帰ってきた。 最後の仕上げにかかろうと思う。 僕は小箱に残った最後の人形(ヒトガタ)をつまみ上げた。 滴る程の負の感情を含んでいるが、他の人形(ヒトガタ)とは少々違う。 左の胸の位置、ちょうど心臓辺りに白い文字で【結】と書いてあるのだ。 それを手に持ち、フッと息を吹きかけてから、 「結んでください」 そうお願いすると、【結】の人形(ヒトガタ)は撃った弾丸のようなスピードで、グルリの人形(ヒトガタ)の真上スレスレを飛んだ。 深呼吸を二度三度、そのくらいの時間だろうか。 等間隔に刺された人形(ヒトガタ)は黒い稲妻状の線でガッチリと結ばれた。 「ジェーン、チェリーボーイ、どうやらバリアーはパーフェクトみたいだな。センキュー! ここからバッドベアー(やんちゃなクマ)を見つけ出すのは任せとけ。ベイビー達は俺の後ろでレモネードでも飲んでいるといい」 キラッと歯を光らせたキーマンさんは、親指を立てサングラスをかけた。 今日は晴天、6月の日差しは眩しくてジリジリと肌を焼く。 だけどキーマンさんがサングラスをかけたのは別の理由だ。 探知の達人。 キーマンさんに見つけられないモノは無い。 物でも人でも、達人にかかれば地球の裏側にあったって探し出してしまうだろう。 彼がどうやって対象を探知するのか。 その方法はこうだ。 探したいモノの情報を得たキーマンさんは頭の中でイメージする。 そのイメージが、どうしてそう変化するのかは謎なのだが、甘いモノの匂いに変換されるというのだ。 本人曰く、 「チョッコレイト……バニラ……ストロベリー、エクレア……シュークリーム……マッカロン……」 とまあ、女子が喜びそうな甘いモノの匂いでいっぱいになるらしい。 その匂いが強く感じる方向へ足を運べば、おおよその位置がわかる。 あとは、対象物自体が発する光を目視で確認(僕には視えない)。 その光の場所をピンポイントであたれば……100パー見つける事が出来るのだ。 キーマンさんがサングラスをかけた理由。 それがこの失せ物が発する光を、より見つけやすくする為にある。 夜の探知なら必要ないが、今日みたいな晴天の昼間だと光が埋もれて視えないからね。
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