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嵐さんの意外性を垣間見た所で、僕と嵐さんとで手分けして、林の外周に人避け人形を刺していく。
土地が広いからちょっとばかし大変だけど、キーマンさんの言う通り、用心に越したことはない。
物理的な針の代わりに、霊力で構築した霊針で固定してまわるのだが、キーマンさんが一緒に来ないのは、彼の霊力は探知に全振りなので霊針を構築する事が出来ないからだ。
だけどそんなコトは問題ない。
霊媒師それぞれ持ってるスキルが違うんだもの。
出来る人が出来るコトをすればいい。
しかし……前回同様、人形を地面に刺すたび、恨めしそうな呻き声がして気が滅入るよ。
いつも思うけど水渦さんの負の感情、マジパネェ。
とかなんとかブーブー言いつつ、僕も嵐さんも全ての人形を刺し終えて林の入口まで帰ってきた。
最後の仕上げにかかろうと思う。
僕は小箱に残った最後の人形をつまみ上げた。
滴る程の負の感情を含んでいるが、他の人形とは少々違う。
左の胸の位置、ちょうど心臓辺りに白い文字で【結】と書いてあるのだ。
それを手に持ち、フッと息を吹きかけてから、
「結んでください」
そうお願いすると、【結】の人形は撃った弾丸のようなスピードで、グルリの人形の真上スレスレを飛んだ。
深呼吸を二度三度、そのくらいの時間だろうか。
等間隔に刺された人形は黒い稲妻状の線でガッチリと結ばれた。
「ジェーン、チェリーボーイ、どうやらバリアーはパーフェクトみたいだな。センキュー! ここからバッドベアーを見つけ出すのは任せとけ。ベイビー達は俺の後ろでレモネードでも飲んでいるといい」
キラッと歯を光らせたキーマンさんは、親指を立てサングラスをかけた。
今日は晴天、6月の日差しは眩しくてジリジリと肌を焼く。
だけどキーマンさんがサングラスをかけたのは別の理由だ。
探知の達人。
キーマンさんに見つけられないモノは無い。
物でも人でも、達人にかかれば地球の裏側にあったって探し出してしまうだろう。
彼がどうやって対象を探知するのか。
その方法はこうだ。
探したいモノの情報を得たキーマンさんは頭の中でイメージする。
そのイメージが、どうしてそう変化するのかは謎なのだが、甘いモノの匂いに変換されるというのだ。
本人曰く、
「チョッコレイト……バニラ……ストロベリー、エクレア……シュークリーム……マッカロン……」
とまあ、女子が喜びそうな甘いモノの匂いでいっぱいになるらしい。
その匂いが強く感じる方向へ足を運べば、おおよその位置がわかる。
あとは、対象物自体が発する光を目視で確認(僕には視えない)。
その光の場所をピンポイントであたれば……100パー見つける事が出来るのだ。
キーマンさんがサングラスをかけた理由。
それがこの失せ物が発する光を、より見つけやすくする為にある。
夜の探知なら必要ないが、今日みたいな晴天の昼間だと光が埋もれて視えないからね。
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