第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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湿った土の上。 キーマンさんを先頭に、(らん)さん、僕の順で林の中を進む。 一緒に来てる僕のプリティ&キュートな大福姫は、自然の木々にはしゃぎまくりのダッシュしまくり、木登りしまくりだ。 キャー! カワイー! 登るだけじゃなくてイチニャンで降りられるなんて天才ー! この広い林の中で、斎藤様がどのあたりで呪いの儀式を行ったのか、十年前の記憶を頼りに大体の場所は聞いてある。 林入口を背中に真っ直ぐ、300メートルから400メートル程度の位置。 足元は土に砂利に木の根っこ、それから小枝に落ち葉に木の実などもいっぱいで、決して足元はよろしくない。 通常時ならともかく、呪い目的のテンパった状態の女性の足ではこのくらいが限界だろう。 「hmm……hmm……hmmmm……」 前を歩くキーマンさんの鼻歌が聞こえてくる。 なんだかゴキゲンだ。 先のとんがったショートブーツは、小さな花を避けながら先に進む。 「今日のスィーツはホワーッツザーット(なにかな)? ホワーッツザーット(なにかな)? マルコー、hmm……ん? ん? ん? オゥイェー! これは焼き立てスコーンアーンドハニーの香りだ。こっちだな……ヘーイ、バッドベアー(やんちゃなクマ)。youがどこにいたって見つけ出すぜ? お仕置きしなくちゃだからなぁ。ぞれがイヤなら全力で逃げるんだ、but、オールウェーイステーッド(無駄)だけどもな、マルコー?」 スゴイな……林に入ってまだ10分と経っていない。 なのにもう手がかりを見つけたのか。 キーマンさんは”焼き立てスコーンとハチミツの香り”がしてきたと言っている。 これは呪いのクマちゃんの匂いだ、キーマンさんにしかわからない匂い。 探知の現場、初めて目の当たりにしたけどこんなに早く分かるんだな。 印も結んでなければ、特別に集中する時間も設けていない。 いつも通りのキーマン節で、花を避け足元に注意しながら、笑いながら、鼻歌を歌いながら、なのに確実に的を絞り始めている。 先代の言った通りだ。 この人、本気で探知の達人だ。 「ヘーイ、マルコー、マルコー? フォレスト()の中で鬼ごっこ、ツリーのプールで泳ぎ逃げろよバッドベアー(やんちゃなクマ)。マルコー、マルコー、……ヘーイ、プリーズアンサー、セイ『ポーロ』……セイ? プリーズセーイ?」 鼻歌はそのままに。 ゆっくりと歩きまわるキーマンさんは、バッドベアー(やんちゃなクマ)を探してるのだが、だんだんとその範囲が狭くなっている。 そしてさっきから気になるのがキーマンさんが何度も”マルコ”と呼びかけているコトだ。 クマの名前なのかな? 斎藤様からそんなの聞いてないと思うんだけど。 それに”ポーロと答えてくれ”とも言っていた……なんのこっちゃ。 これはさっそく検索だ、と僕はポケットからスマホを取り出すも…… なんですとーっ!?  まさかの圏外!?  最近ではどこへ行っても圏外を食らうコトなどなかったのに……ショボーン。
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