第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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検索ダイスキ30才独身、猫の下僕。 まさかの圏外表示にガックリしながらスマホをポッケに戻す。 そんな僕の姿があまりに哀愁漂っていたのか、(らん)さんが声を掛けてくれた。 「……お、お、岡村さん……ど、どうしたんですか?」 目線は明後日どころか来月あたりを向いてるけれど(完全に横を向いて目は合わせない)、それでも僕を気にかけてくれたのだ。 なんだろ……嬉しい。 たとえるなら、気が弱くて懐いてくれない近所の猫が、少しずつ、本当に少しずつのミリ単位で近づいてきてくれるのに似てる。 「あのね、さっきからキーマンさん、『マルコー』とか『ポーロー』とか言ってるでしょう? クマの名前? とか、冒険家? とか思ったけど、なんか違うような気がして、スマホで検索しようとしたら……圏外なの。僕、ネットがないと不安になるタイプなのに。……(らん)さんはキーマンさんの言ってる意味わかる?」 「……ん、な、なんだろね。わかんないや。キーちゃんって普段からヘンなコトよく言うからねぇ。……じゃあ、ボクが調べてみよっか?」 おっ、(らん)さん気付いてるのかな? 今、僕に対して敬語を使ってないってコトに。 行きの高速、車の中でいっぱいおしゃべりしたから、少しは慣れてくれたのかもしれない(姐御とミスターの結婚話で盛り上がったからねぇ)。 いいぞ! この調子!  「アリガトね……でも(らん)さんのスマホも圏外なんじゃない? だって同じ場所にいるんだも、……あ、」 言いながら思い出した。 (らん)さんが車の中でスヤスヤしてた時、キーマンさんはこう言ったんだ。 ____ジェーンはネットの世界にダイブする、 と。 あれ? もしかしてさ、スマホが圏外だろうが(らん)さんには関係ないって話? ちょ、それすごい便利じゃない? 「さっき……キーマンさんからスキルを聞いたんだ。(らん)さん、ネットの世界にダイブするんでしょう? ねぇねぇ、(ココ)、圏外だけどそれでも出来ちゃうの?」 ワクワクしながら聞いてみる。 すると恥ずかしそうに慌てながら、 「ス、スキルって、そ、そんなに大したモノじゃないよ……で、でも、検索……出来るよ……」 「ワーオ! リアリィ? ってイカン、キーマンさんが移っちゃった。気を付けなくちゃ……って、そんなコトより(らん)さん! やって! 僕見たい! あ、てか、見ててダイジョウブ? 僕が見てたら緊張しちゃう? アクセス失敗しちゃう? 離れてよっか?」 なんちゃって、親切を装ってるけど離れたって大丈夫。 (らん)さんには言ってないけど、僕の視力は両眼2.0。 見てない振りして見る気満々……とたくらんでいたのに。
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