第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「ダ、ダイジョブだよ。でもダイブ前にジーッと見たりしないでね。そ、それされたら緊張して、うまくネットの世界(むこう)に行けなくなっちゃうかも。で、でも安心して。行っちゃえば単純な単語の検索だもん、すぐに終わると思う。……じゃあ、行ってくる____あ、あんまり見ないでね、」 そう言った(らん)さんは、その場にしゃがみ自然な角度で前を見て、細い手指を複雑に絡め始めた。 それは初めて見る印だった。 水渦(みうず)さんのともジャッキーさんのとも違う。 もっと繊細で、とても慎重で、控えめな印だった。 そう時間もかからず、手指は絡めたまま動きを止めたのだが…… あ……あれは……さっきのあの目だ。 斎藤様の家で見た、黒目だけがやたらと強調された光をなくした目。 その目になって十数秒、突如(らん)さんの身体がガクッと揺れた。 「……(らん)さん?」 小さな声で声を掛けるも聞こえていないかのような無反応。 顔の前で手をサササと動かしてみるが、これにも反応を示さない。 もしかして……今、(らん)さんはネットの中にいるのかな……? しゃがみこんだまま、眠りに落ちるように顔がだんだん下がってくる。 どうも意識がなさそうだけど……ダイブすると、こんなんなっちゃうんだ。 てかさコレ便利だけど危険じゃない? これじゃあ霊力(ちから)をネットワークに飛ばしてる間、生身の身体に何かあっても対応が遅れるんじゃないのかな。 ああ、そっか。 だから通常のネット回線と併用なのか。 これだと霊力(ちから)を使ってダイブするには、時と場所を選ぶよね。 心配になった僕は辺りをキョロキョロ見渡した。 ココに生者はいないけど、もしも呪いのクマちゃんが現れたら、通りがかりの悪霊が現れたら、(らん)さんを守れるのは僕しかいない。
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