第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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最初の説明は“キッカケ”だった。 (らん)さん曰く。 お、岡村さんも、研修の講師は社長だった? ボクもそうだったんだけど、基礎のトコロで放電の練習があったと思うんだ。 ネットに入り込むのは、ほ、放電の応用というか進化系というか……そんな感じなの。 え……分かりにくい? わっ、ごめ、そ、そうだよね、放電の応用なんて言って、さっきは放電してないものね。 ボ、ボク、説明があんまり得意じゃないんだよな……でもがんばるからね。 さ、最初は偶然……やぁ……事故に近いかな……だったんだ。 入社してすぐ、座学と放電の練習ばっかりだった頃。 夜、家でネットゲームをしてた時にルーターの調子が悪くなって繋がらなくなったの。 次のバトルに勝てばレベルも上がるってタイミングだったから、慌ててルーターリセットかけたり色々したんだ。 でもぜんぜんダメで、せっかくイイ所だったのにーって、続きがしたいーって癇癪起こして、うわぁぁって放電して憂さ晴らししてたら……一瞬視界が真っ暗になって、次に明るくなったと思ったら……ボクね、ゲームの中にいたの。 あ……あれ……? お、岡村さん、もしかして信じてない……? え……信じてる? 信じてるけど意味がわからない……? そ、そうだよね、ボクも状況がわからなくてパニックになったもの。 どうしてそこがゲームの中かわかったかっていうと……そこにいる人も動物も風景も何もかも……デジ絵だったんだ。 飽きるほど見たゲーム画面そのものなの。 も、ものすごい違和感だったよ、だってボク一人がリアルなビジュアルなんだもん。 そこではいろんなキャラ達が戦ったり、食事をしたり、宿に泊まったりしててね。 キャラは全員デジ絵だったけど、きっとリアルの世界で誰かそれぞれ操作してるんだろうなって、勇気を出して話しかけてみようと思ったけど……出来るはずもなく……どうやって帰っていいかわからないし、リアルなボクを見たキャラ達はザワザワし始めるし……どうしよどうしよって泣きそうになったんだ。 とりあえず人気(ひとけ)の無い場所に逃げたんだ。 それでどうしてこんな事になったか考えて……そうだ、ゲームの続きがしたくて、癇癪おこしていっぱい放電したらこうなったんだ……じゃあ、同じ事してみようって放電頑張ったんだけど……帰れなくて…… さ、さらに厄介な事に、放電するたびボクのいる場所が変わるの……瞬間移動みたいな感じで。 そんなの繰り返してたら、最初の何度かは知ってるゲームに移動したのに、最後は全然知らないゲームに着いちゃって…… 知らないゲームじゃマップも頭に入ってない、敵キャラの特徴もわからない……終わったって思ったんだ。 だけどね、そんな絶望感の中、ふと思い出したの。 会社で……先輩霊媒師の方が僕にこう言ったのを。 ____キミもネットゲームをするのかい? ____自分もだよ、 ____最近ハマッてるのは【マジカル陰陽師】というゲームなんだ、 ____手強い悪霊や妖怪とバトルをするゲームでね、 せ、せっかく話しかけてくれたのに、ロクに返事も出来なかった。 で、でも、先輩は怒らないでいてくれて、 ____陰陽師でアカウントを取ったら会いに来てよ、 ____ゲーム内でも自分は”ジャッキー”と名乗ってるから、 そう誘ってくれたんだ。
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