第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

48/122
前へ
/2550ページ
次へ
そ、それで……や、闇雲に放電するだけじゃダメだ、だ、誰かの助けが必要だって思って、だけど知らないキャラに話しかけるなんてとてもじゃないけど出来なくて……だからボク、なんとかして【マジカル陰陽師】に行くしかないって、ジャッキーさんに助けてもらうしかないって、思ったの。 その日その時間、ジャッキーさんがログインしてるかどうかもわからないけど、帰るにはそれしかなくて、ひ、必死になって放電したんだ。 【マジカル陰陽師】に行きたい! って強く願いながら何度も何度も。 でも……飛ぶ先々は知らないゲームや、知ってても【マジカル陰陽師】じゃなくて、慣れない霊力(ちから)の使い過ぎでお腹はすくし、疲れちゃって……諦めかけたの……もういいかなぁって……このままゲームの中で屍になるか、モンスターだと思われて知らないキャラに倒され誰かの経験値になれば、こんなボクでも役に立つかなぁって。 だけど……前の会社クビになって……”おくりび”に入社して……どうせまたすぐにクビになるって思ってたのに……社長も先代もジャッキーさんも弥生さんも……優しかったなぁって。 赤面症でコミュ障のボクを……小野坂さん以外はみんな馬鹿にしないし、怒らなかったなぁって思ったら……も、もう一回だけ会いたいなぁって。 だ、だから……少し休んで、あとちょっとだけ頑張ってみようって……それから99回目の放電で……行けたの、【マジカル陰陽師】に。 やったぁって喜んで、あとは広いゲーム内、ど、どうやってジャッキーさんを探そうかと考えてたら……ゲームの中で夜になって……あっという間に悪霊と妖怪に囲まれたんだ。 ボク……武器なんて持ってないし、戦うにも画面越しにスマホかコントローラーがないと戦えない。 実戦なんて無理……だってリアルの世界で喧嘩なんかした事ないもの。 どうしようって、ゲーム内でライフがゼロになったらリアルのボクも死んじゃうのかなって、そう考えたら身体が震えて、動けなくなって……さっき斎藤様が言ってたコト、すごく気持ちがわかるんだ。 ほ、本当に怖すぎると動けなくなるよね。 ば、ばかみたいに石化してたら……あ、悪霊達が一斉にボクに飛び掛かってきたの。 だ、ダメだ、死んじゃうって……怖くて震えて立ち尽くしてたら、ひ、光の速さで、誰かが、ボクの前に、そ、それで、長い棒で、一瞬で、敵キャラ全員倒して、助けてくれて…… 「やっぱり(らん)くんだったか。 わかるかい? 自分だ、”おくりび”のジャッキーだ。 アカウント取得した感じではなさそうだが……会えて嬉しいよッ!」 ジャッキーさんが来てくれたんだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加