第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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ボクを助けてくれたジャッキーさんは……ゲームの中だし、と、当然デジ絵だったんだけど……【マジカル陰陽師】はプレイするのに、オリジナルキャラを作れるみたいでね。 茶色のカンフースーツに肩に担いだ長い棒、クシャっとした髪に大きな垂れ目はリアルのジャッキーさんによく似てて、すぐにわかったよ。 「本当なら今夜はログインしないつもりだったんだ。だけどネットがザワついていてね。数多オンラインゲームに次々バグが生じてる、二次元のゲーム画面にどう見ても三次元の男が現れるって、いろんな板にスクリーンショットが貼られてたんだよ。画像は荒かったけど、見てたらどうも(らん)くんに似てる気がしてさ、それが気になって急遽【マジカル陰陽師(ココ)】に来たんだ」 ボクがいろんなゲームに入り込んでしまったから、リアルを騒がせてしまった……ボクのショットがネット上にたくさん貼られてるみたいだけど、だ、大丈夫かな、特定されたらヤダな。 で、でも、もしリアルに帰れなかったら特定も何もないし、そもそも騒ぎに気付いてくれたからジャッキーさんが来てくれたんだもの。 悩むのは無事に帰れたらにしようって思ったんだ。 ジャッキーさんに事情を説明して、どうしてネットの世界に入り込んでしまったのか、どうやったら帰れるのか……は、恥ずかしいけど、ボク、泣きながら聞いたの。 そ、そしたら…… 「そう、放電しまくって気付いたらネットの中にいたのか……ん、そんな話、聞いたコトがないな。すまない、(らん)くんがどうしてこうなってしまったか、どうしたらリアルに帰れるのか、自分にはさっぱりわからないよ。とにかく社長に連絡してみる。(らん)くんの本体も心配だしね」 ジャッキーさんはそう言って……リアルの方で社長に電話をしてくれたの。 ボクは、それがありがたくて、ホッとして、だけど……なんか申し訳なくなってしまったんだ。 「あ、ありがとうございます……あ、あの……ごめんなさい、ボク……入社したばかりなのにご迷惑おかけして……ジャッキーさんとも……ちゃんと話したコトもないのに……困った時だけ……図々しく頼ったりして……ボク……本当に……」 な、情けなくて、恥ずかしくて、また泣きそうになったんだ。 ボクはしてもらうばっかりだ。 だけど…… 「迷惑? なに言ってるんだ。こんなの迷惑のうちに入らないよ。困った時に助け合うのは当然だろう? 泣くこともないし、そんなに小さくならなくていい。頼ればいいよ」 そ、その時のジャッキーさんの声、す、少しも、嘘がないって言うか、ほ、本当に頼ってもいいんだなって……思わせてくれて……あの時、すごく嬉しかったんだ。
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