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「社長に連絡したよ。どうしたらいいか考えるから、ゲーム内で待っててくれって。なに、大丈夫だ。嵐くんが帰れるまで自分がずっと傍にいる。悪霊や妖怪が出ても守るからね」
ボク……なんて言っていいかわからなかったよ。
昔からコミュ障で……あんまり友達いないし、何か困った事があっても……誰かにタスケテって言えないんだ。
だから一人で何とかするか、何とかならなければ諦めてきたの。
それなのに……ジャッキーさんも社長も……一生懸命ボクを助けようとしてくれて……こういう時、なんてお礼を言えば、気持ちが伝わるのかわからなくて……すごくもどかしかったのを覚えてるよ。
社長からの連絡を待ってる間。
最初は何を話していいかわからなくて沈黙してた。
けど、ジャッキーさんが「嵐くんは今なんのゲームに常駐してる?」って聞いてくれて……それで話してるうちに、昔、同時期に、同じゲームをしてたコトがわかって……そのおかげで、一気に話が盛り上がったんだ。
……え?
ジャッキーさんとお話しても緊張しなかったのかって……?
んとね、大丈夫だった。
リアルで顔見て話すのは緊張するけど……ほら、あの時はゲームの中だったから……ジャッキーさんもまわりの風景も通りがかりのモブキャラも、みんなみんなデジ絵でリアリティがなかったの。
だからジャッキーさんとお話してても、ゲーム内のボイスチャットみたいで緊張しないですんだんだ。
「いやぁ! 嵐くんは相当イケるクチだねぇ! ゲームだけじゃない、漫画もアニメもラノベもフィギュアもなんでも来いだっ! 自分、久しぶりにリミッター解除して話してるよ!」
「……いや……そ、それほどでもナイです……ボク……友達少ないから……昔からインドアで……」
「インドア? いいじゃない。自分も昔、スーパーインドアな時期があってね」
「そ、そうなんですか? 社長がジャッキーさんは元スタントマンで、テレビにも出てたんだぞって言ってたから、イメージがインドアとは結び付かない……」
「社長は大袈裟だな。テレビには出たけど、自分はただの吹き替えだ。顔なんか映りゃしなかったよ」
「……で、でも、すごいです! だけどスタントマンだなんて……危険そうだし怖そう……」
「確かに危険なコトもあったよ。でもね、最高に楽しかった。いろいろあって引退したけど、やって良かったと思ってる。嵐くんもそうじゃない? ゲームが最高に楽しいだろう? ゲームでもスタントでもなんだっていいんだ。夢中になれるものがあるって素晴らしいコトだよ」
「……そ、そうですかね……? ゲームなんて遊びだけど、それでもいいんですかね……?」
「いいに決まってるさ」
「……そ、そか、いいのか……えへへ…… そんなコト言われたの初めてです……嬉しいなぁ。
…………あの、ジャッキーさん、もしよかったら今度、僕の作ったゲームにご招待してもいいですか? クビになっちゃったゲーム会社でコツコツプログラム組んでたのがあって、……あのゲーム、『クソツマンネんだよっ!』ってボツになったけど、クビになってからもずっと作り続けて、こないだやっと完成させたんです。でも……少ない友達はみんなゲームしないし……たまに起動させてボク一人でプレイしてるんだけど……それでもし一緒に出来たらなぁって、思って……」
なんでこんなコト言ってるんだろって、自分でも不思議だった。
ゲームの自作なんて誰にも話したコトがなかったのに。
前の会社で『クソツマンネ』って言われて、自信なくして、完成させても誰かと一緒にプレイなんて考えたコトもなかったのに……ジャッキーさんとなら一緒にプレイしたいって思ったんだ。
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