第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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そ、それから三人で社長からの連絡を待ってたの。 お話したり、敵が来たらジャッキーさんが戦って、傷付いたジャッキーさんを弥生さんが回復させて……ボ、ボクは……その……戦えないし、回復霊術も使えないから……応援してた。 そんな事をしてたらだいぶ時間が経って……連絡来ないねなんて話してたら……遠くに黒いシルエットが見えて……それがね遠近感がおかしくなるくらい身体の大きなキャラ(ひと)だったの。 そのキャラ(ひと)はヨタヨタ歩いてるかと思えば、いきなり走り出したり、そうかと思えば何もない所で転んだり、立ち上がるのも時間がかかって地面をゴロゴロ転がったり…… ボクもジャッキーさんも弥生さんも、そんな様子を見てわかったんだ。 あの動きは超ビギナー、普段ゲームなんてしない人だって。 やっとのコトでボク達の前に来た身体の大きなキャラ(ひと)は、法衣(ほうえ)葛袴(くずはかま)、高い歯の足駄(あしだ)を履いて、手には薙刀。 この流れで言えば袈裟頭巾を被っているはずなのに、それは被っていなくって、だからツルツル頭がお月さまみたいに光ってたけど……まさしく僧兵だったんだ。 「ったく……! うまく歩けやしねぇ!  おぅ! おまえら待たせたな! (らん)、怖かっただろ? もう大丈夫だ。ジャッキー、電話ありがとな。それと……ん? オマエ誰だ? あぁ? 弥生? なんでオマエまで来てるんだ、って……んぷーっ! よく見りゃなんだその恰好! 巫女装束たぁ、ずいぶん気合入ってるじゃねぇか! 実物と違って美人だな、ガハッ! オ、オイヤメロ、攻撃するな転ぶから、俺、転ぶとうまく立てねぇんだよ」    弥生さんに叩かれて転んだ僧兵……ん、そう、もうわかっちゃったよね。 僧兵キャラで現れた社長は、生まれたてのキリンみたいにプルプルしながら、なんとか立ち上がったの。 だけど操作がうまく出来ないみたいで、ボク達の方を見ようとするけど……なぜか受け身を三回とってた。 「で? わかったのか? (らん)ちゃんがリアルに帰る方法」 巫女さんキャラの弥生さんが、さっそく社長に聞いてくれたの。 ジャッキーさんが電話をしてからずいぶん時間が経ってるし、ボクもジャッキーさんも弥生さんも、きっと社長は解決策を持ってきてくれたって、ドキドキしながら返事を待ってたんだ……でもね。 「いやな、それがよ。ははっ! ぜっぜんわかんネンダワ! ジジィに聞いても、そんな話聞いた事がねぇって言うし、俺もそう。とりあえず今おまえらに報告出来るのは、(らん)の本体が無事だって事だけだ。これはジジィが(らん)の家に行って確認した。ついでに本体に何かあるといけねぇからジジィが傍に付いている。解決策はまだねぇけど、とりあえず俺も(らん)のトコ行くか! って思ってな」 デフォルト装備の薙刀を振り回しながら……でもその薙刀が自分の頭に当たっていきなり瀕死になった社長は、弥生さんの回復霊術でなんとかライフを取り留めたんだけど……これからどうすればいいのか、それを考えると社長以外のボク達は長い溜息をついたんだ。
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