第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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大きな霊体丸ごとは無理だけど、小さく分解されれば可能…… 社長経由の先代の予想に、弥生さんは「なに言ってるかわかんないんだけど」とプリプリしてた。 でもジャッキーさんとボクはなんとなく言ってる意味がわかったんだ…… でもだからって、その理屈でホントに人が、生者が、ネットの世界に入れるとは考えにくい……ん……でも……現にボクはネットの世界(ココ)にいるんだよな…… それに……言われて思い出したの。 ボクは昔から金縛りによくあってた。 金縛りにあうと、きまって動かない身体からもう一人のボクが抜け出して、天井あたりから寝てるボクを見てたんだ…… それが幽体離脱であるというのは、ネットで調べて知っていたけど……そういうのが頻繁にあった。 ボクは元々幽体離脱体質なのかもしれない。 そんなコトを考えていたらジャッキーさんが、 「たぶん……先代の言ってるコトが真相に近いのかもしれないね。(らん)くんの霊体が分解されて小さくなって、(らん)くんの放った電流を伝ってネットの中に入り込んだ。……弥生、ダイジョウブか? おまえ頭から煙が出てるぞ? もっとわかりやすくたとえよう。(らん)くんは、”自分自身をネットにアップロードした”,と考えればいい。通信経路は(らん)くんの放った電流。データは自身の霊体だ。ただし、丸ごとの霊体ではデータ量が大きすぎてアップロードかなわない。そこで分解だ」 やっぱり……ジャッキーさんもボクと同じ事を考えたんだ。 意識してやったんじゃないけど……ボクがボク自身をアップロードしたの。 短い時間で、途中固まる事なく、大きなデータをアップロードさせるには…… 「(らん)くんは自分と同じ考えのようだね。そうだ、おそらく”パケット通信”と似た要領だったんじゃないかな? ”(らん)くんの霊体”という大きなデータを、パケット、訳すと”小包”だが、たくさんの小包に変換した。分割されれば、回線代わりの(らん)くんの電流に乗せてアップロードするのもたやすい……ま、放った電流がネットの世界と直結されたのは何故か? という疑問は残るが、それはこれから考えるとして、ネットの中に入り込んでしまったのは、この理屈の可能性が高いと思うよ」 その仮説が正しければ……ボクがリアルに帰るにはどうしたらいいか、少しだけ道が開けた気がした。
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