第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ 「いやはや……とっちらかってる」 (らん)さんの話を聞けば聞くほど、当時の混乱っぷりが目に浮かぶようだった。 幽体離脱(?)がキッカケで、オンラインゲームの中に入り込んでしまったってだけでもアレなのに、心配して集まってくれたメンツがまた濃いぃんだよ。 社長に弥生さんにジャッキーさんだもんな(厄介な順に並べてみた)。 ま、あの三人はスキルもあるし、頼もしいっちゃあ頼もしい。 だけどあの人達は、おそろしく話を脱線させるのだ。 あの脱線がなければ、おそらく話す時間は半分ですむ。 「それで、どうやってリアルに帰ってこれたの? (らん)さん、一人で何とかしようとして引き止められて、その後どうしたの?」 気を遣って、みんなをログアウトさせてあげようとした(らん)さんに「待てコラ」はないだろうと思いつつ、ま、あの面子なら仕方ないかとも思う。 しかし、社長も言い方な。 ____あーーーっ! なんかよ、こういうのってメンドクセェな! 今の僕ならワカル。 これは決して(らん)さんを助けるコトが面倒になったんじゃない。 たぶん、解決策が浮かばなくて、延々頭で(・・)考えてるのが面倒になったんだ。 そういう心の内の説明もなく、いるだけで圧があって暑苦しいタイプの人が、いきなり文句言い出したらコワイよね、引くよね、そりゃログアウトしてくださいって言うよね。 本当はさ、 ____いいか、エイミー。まどろっこしい話は無しだ! 男ってのはな、拳と拳でわかりあうのが一番なんだよ! ってのが口癖だもの。 良くも悪くも考えるより行動派。 ああ……その後、社長がどういう行動に出たのか……なんとなく想像がつくよ……きっとその”拳系”のアレだ。 (らん)さん……大変だっただろうなぁ。 「そ、それでボク……ひ、引き止められて……三人からスゴク怒られたの。もっと頼れって」 ____(らん)ちゃんはウチの会社の新入社員なんだよ? もっとアタシら先輩に甘えな。……なんだよー泣くなよー。気にしなくていいの、(らん)ちゃんは一番の年下なんだし。えっと、確かアタシの5コ下だっけ? ____弥生! どさくさ紛れに年齢詐称してんじゃねぇぞ! (らん)! だまされるな、コイツは37だ! (らん)より16も年上だ! ____はぁぁ……いくらなんでも桁違いに詐称しすぎだ。(らん)くん、すまない。弥生がバカで。自分がかわりに謝るよ。 あぁ……目に浮かぶ。 てか弥生さん、僕と初めて会った時も年齢詐称してたっけ。 もはや持ちネタか? 「弥生さんがトシごまかして……笑っちゃって……結局ボクはみんなに甘えるコトにしたの。ホ、ホントは……一人で残るの怖かったから……すごく嬉しかった……それでまた……解決策をみんなで考えるのかなって思ってたら……社長が『俺にいい考えがある』って言いだしてね、」 嫌な予感がする。 考えるコトに飽きた社長の”いい考え”ってのは、たぶん、おそらく、ロクなモンじゃない。
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