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「いやはや……とっちらかってる」
嵐さんの話を聞けば聞くほど、当時の混乱っぷりが目に浮かぶようだった。
幽体離脱(?)がキッカケで、オンラインゲームの中に入り込んでしまったってだけでもアレなのに、心配して集まってくれたメンツがまた濃いぃんだよ。
社長に弥生さんにジャッキーさんだもんな(厄介な順に並べてみた)。
ま、あの三人はスキルもあるし、頼もしいっちゃあ頼もしい。
だけどあの人達は、おそろしく話を脱線させるのだ。
あの脱線がなければ、おそらく話す時間は半分ですむ。
「それで、どうやってリアルに帰ってこれたの? 嵐さん、一人で何とかしようとして引き止められて、その後どうしたの?」
気を遣って、みんなをログアウトさせてあげようとした嵐さんに「待てコラ」はないだろうと思いつつ、ま、あの面子なら仕方ないかとも思う。
しかし、社長も言い方な。
____あーーーっ! なんかよ、こういうのってメンドクセェな!
今の僕ならワカル。
これは決して嵐さんを助けるコトが面倒になったんじゃない。
たぶん、解決策が浮かばなくて、延々頭で考えてるのが面倒になったんだ。
そういう心の内の説明もなく、いるだけで圧があって暑苦しいタイプの人が、いきなり文句言い出したらコワイよね、引くよね、そりゃログアウトしてくださいって言うよね。
本当はさ、
____いいか、エイミー。まどろっこしい話は無しだ! 男ってのはな、拳と拳でわかりあうのが一番なんだよ!
ってのが口癖だもの。
良くも悪くも考えるより行動派。
ああ……その後、社長がどういう行動に出たのか……なんとなく想像がつくよ……きっとその”拳系”のアレだ。
嵐さん……大変だっただろうなぁ。
「そ、それでボク……ひ、引き止められて……三人からスゴク怒られたの。もっと頼れって」
____嵐ちゃんはウチの会社の新入社員なんだよ? もっとアタシら先輩に甘えな。……なんだよー泣くなよー。気にしなくていいの、嵐ちゃんは一番の年下なんだし。えっと、確かアタシの5コ下だっけ?
____弥生! どさくさ紛れに年齢詐称してんじゃねぇぞ! 嵐! だまされるな、コイツは37だ! 嵐より16も年上だ!
____はぁぁ……いくらなんでも桁違いに詐称しすぎだ。嵐くん、すまない。弥生がバカで。自分がかわりに謝るよ。
あぁ……目に浮かぶ。
てか弥生さん、僕と初めて会った時も年齢詐称してたっけ。
もはや持ちネタか?
「弥生さんがトシごまかして……笑っちゃって……結局ボクはみんなに甘えるコトにしたの。ホ、ホントは……一人で残るの怖かったから……すごく嬉しかった……それでまた……解決策をみんなで考えるのかなって思ってたら……社長が『俺にいい考えがある』って言いだしてね、」
嫌な予感がする。
考えるコトに飽きた社長の”いい考え”ってのは、たぶん、おそらく、ロクなモンじゃない。
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