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「ボクの時はね……ゲームの中の社長はデジキャラだからぜんぜん怖くなかったんだ。ああ……ホントにバーチャルで良かったよ……リアルでフライパン潰すの見たら、きっとすごくびっくりしちゃう……そんな人が『かかってこい!』なんて言ってきたら……泣きながら逃げると思う……」
はは……ははは……だよねぇ、僕も実際半泣きで逃げ出したよ。
「岡村さんの言った通り……社長は『とことん追い詰めたら嵐の潜在能力が開花するハズだー』って……ボクに攻撃してきんだ……けど……ゲーム操作に慣れてない社長は、ヨタヨタのヨチヨチで、両手を上げて走りだしたかと思えば、ボクの横を通り過ぎてしまったり、誰もいない所でキックしたり……結局攻撃は一つも当たらなかったの」
思い出しておかしくなったのか、嵐さんはクスクスと笑う。
てかダメじゃん。
社長、そんなヘタレじゃ潜在能力引き出せないじゃん。
アンヨが上手になってから出直してこいレベルじゃん。
「社長がそんな調子だから、ジャッキーさんと弥生さんは二人でおしゃべり始めちゃうし、ボクは……その、そういう訳にいかないから……社長に付き合ってたの。だってボクの為にしてくれてるコトだし……だけどいつまでたっても一発のパンチすら入らないから……そのうち社長も、これじゃあ潜在能力引き出せないって……焦ったらしく……それで……ジャッキーさんと弥生さんに、ボクを攻撃するように言ったんだ」
「あらら、そりゃまた一気に状況が変わるね」
「うん、そうなの。最初は弥生さんがブーブー言ったんだ。『そんなコトでリアルに帰れると思えないけど』って。でも……ジャッキーさんが『自分もそう思うよ。だが、かといって他に良い案もない……ここはひとつ試してみるか』って……」
まぁ、そうだよね。
代案もない状況じゃあ、なんでもいいから試す方がいいだろう。
だけど、攻撃者がヨタヨタ社長からジャッキーさんに代わるとなると、笑ってはいられないぞ。
「ジャッキーさん相手じゃ、本気で逃げるか戦わないとやられるよねぇ。なんせガチオタだし、ゲーム操作も匠の技でしょ?」
「ん、スゴかった。キャラをね、まるで生身の人間みたいに動かすの。……ジャッキーさんはコントローラーと手指の神経が繋がってるんだと思うよ」
「神経繋がってる感があるの? そんなに? マジか。あの人どんだけゲームやり込んでんだよ」
「ボクも相当やり込むタイプだし、ゲームには自信があるつもりだったけど……もっとうまいんだ。リアルに戻ってからジャッキーさんと一緒にゲームしたコトもあるけど……神だった。どんなに複雑なコンボでも一発で入れちゃうし、格ゲーでもシューティングでも、このゲームは専用コントローラーがないと無理……っていうのさえノーマルコントローラーでクリアしちゃうんだ……そんなジャッキーさんの前じゃあ……『ボク、ゲーマーなんです』なんて恥ずかしくて言えなくなっちゃう……そのくらいスゴイの」
「そんなにか……ガチだな。てか、考えてみればジャッキーさんって、憑依の達人だもんね。フィギュアを遠隔で操るのも、ゲームキャラ操るのも、通じるモノがあるのかも」
僕はゲームは嗜む程度。
それでも嵐さんの話を聞いて、ジャッキーさん操るキャラを見てみたい! と思ったのだ。
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