第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「本当にそんなコト出来んのかよ、うわぁ!」 取るつもりのない受け身を取っちゃう社長が弥生さんにそう聞いたの。 聞かれた弥生さんは、「たぶんなー」って答えながら、軽い足取りでボクとジャッキーさんの傍に来てくれたんだ。 「潜在能力を引き出すとかよくわかんなけどさ、とにかく(らん)ちゃんはコントローラーがほしいんだろ?」 ボクはコクコク何度も頷いた……けど、やっぱり半信半疑だったんだ。 弥生さんがウソをついてるなんてもちろん思わないけど、でも……そんなの無理じゃないのかなって。 ジャッキーさんも同じ気持ちだったのか、弥生さんに向かってこう聞いたんだ。 「コントローラーをネットの世界(ココ)に? ……無茶言うなよ、どうやって持ってくるんだ。霊体となった(らん)くんがココに来れたのと訳が違う。リアルに存在するコントローラーは、当たり前だが実体のある物質だぞ?」 「あははは、そりゃそうだ。コッチのコントローラーなんて持ってこれないよ、無理に決まってるじゃんか」 「いや、だっておまえが言ったんだろ。『ココにコントローラーがあればいいのか?』って、」 「うん、言った。でも持ってくるとは言ってない。ココで構築するんだよ、霊力(ちから)でさ」 霊力(ちから)で……構築……? ボクは……それを聞いて社長の研修を思い出したの。 ____(らん)、放電はもう大丈夫だな、 ____じゃあ次の課題だ、 ____いいか、放電したらその電気をこねて丸めて、 ____んぷぷっ! ミカンを作るんだ!  ____(らん)霊力(ちから)の固定カラーはオレンジだからな、 ____テキトウに丸めればミカンに見えるだろ、んぷぷー! ボク……言われた通り、社長が持ってきた段ボール箱いっぱいに電気のミカンを作ったんだ。 後からアレが霊力(ちから)の構築だって言われて……丸めただけのミカンだけど、簡単なモノだけど……ボクにも構築が出来たんだって……すごく嬉しかったの。 あの時、現場から帰ってきた弥生さんが事務所にやってきて……電気ミカンを見て驚いてくれたんだよ。 「(らん)ちゃん覚えてる? 前にさ、事務所においてあった箱ミカン。アタシ、本物かと思って一個食べようとしたんだよね。そしたら……チッ! 誠のヤロー、『だまされたな! よく見りゃ光ってんだろ! そりゃ(らん)が構築した電気ミカンだっ!』って、すっげー笑いやがったんだ。モチロン誠はシメたけど、あのミカン、本物と間違えるくらい完成度が高かった。あれだけ器用に構築出来るんだ。だったらコントローラーも霊力(ちから)で構築すればいいんだよ!」 ニコニコ笑う弥生さんが元気いっぱいにそう言ったんだけど……ミカンとコントローラーじゃ複雑さがぜんぜん違う……やっぱり……構築するのはボクだよね……? ど、どうしよ……うまく作れる自信がないよ。 ボクの不安をヨソにジャッキーさんは、 「なるほど……リアルから持ってくるのは無理だが、現地(ココ)で構築するのなら……入手可能じゃないか!」 もうノリノリなの……弥生さんも社長もおんなじで「ヨシ! 今すぐ構築だ!」って盛り上がってて……ボク……プレッシャーでおなかが痛くなるくらいだったんだ。 だけど……頑張ったよ。 だってね、 「さあ、(らん)くん。最高にイカしたコントローラーを構築してちょうだい。でないと、丸腰のキミに追い込みをかけなくちゃならないからね。悪いけど、自分は一度やると決めたら手加減はしない。連続コンボでいかせてもらう。……ねぇ、(らん)くん。自分はね、キミをリアルに返してあげたいのはもちろんだけど、戦ってみたいんだ。……自分と同じ、ゲーマーの深渡瀬(らん)とね」 そんなコト言われるとは思っていなかった。 同じゲーマーとして戦ってみたい……ボクの中でスイッチの入る音が……確かに聞こえた。
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