第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「ボ、ボクも……ジャッキーさんと戦ってみたいです、でも、どうやって構築したらいいんでしょうか? ボクがこれまでに構築したモノといえば……ミカンと……それからポンカンとネーブルと……ごめんなさい、オレンジ色の丸いモノしかないんです、」 やる気はあるのに霊力(ちから)が追い付かない、方法がわからない。 だけど、ダ、ダイジョウブ……なはず。 だってココにはベテランの先輩がいるんだもん。 「どうやって、か。口で説明するのは難しいが……霊力(ちから)でモノを構築するにはね、構築するモノの構造を正しく理解している必要があるんだ。(らん)くんは前にミカンを構築したと言っていたが、それはきっとミカンが身近な果物で、昔から何度も口にしていたからだと思う。ミカンの生産者のように……とはいかないだろうが、作り自体は単純だ。少なくとも弥生が本物と間違えるくらいに理解していたいうコトだ」 ミカンを理解……た、確かに……ボクはミカンが……というより果物が大好きで、お肉やお魚よりも好んで食べる。 三食のうち一食は果物だけで済ますコトも多い。 「さて、キミが自分と同じくらいのゲーオタだと仮定する。もしその仮定が正しければ、ゲームハード機の構造を隅々まで熟知してるんじゃないのかい?」 いつもは優しいジャッキーさんなのに、言葉には挑戦的な色が含まれる。 構造を熟知してるか……って? 「も、もちろんです。ハードは実用用のほかに……安い中古をいっぱい買いました。新しい機種も古い機種も……全部です。それをバラバラに分解して組み立て直して……この作業を何年も繰り返してきたんです。目の前に現物がなくたってどのパーツがどこに収まるのか、それぞれの役割もなにもかも……頭に入ってます」 中古品の分解と組み立て、それにジャンク品から使える部品を取って、ニコイチでいくつものハードを蘇らせてきたんだ。 ゲームだけは……ソフトもハードも誰にも負けたくないと思っているから。 「そう、それなら問題ないな。ネットの世界(ココ)にいる限り、霊力(ちから)を使うコトが出来るのは霊体である(らん)くんしかいない。同じ場所に立つ自分も社長も弥生も、外部(リアル)からログインしてるだけ。いくら霊力(ちから)を発動させてもネットの世界(ココ)に反映されないからね。霊力(ちから)を発動させながら、パーツの一つ一つを思い出してごらん。それで順番に組み立てるイメージを浮かべるんだ」 「……はいっ!」 スイッチが入りっぱなしだった。 あの時のボクは……リアルに帰るためとか、潜在能力を引き出すためとか、そういうのは二の次になってたの。 ただ……大好きなゲームでジャッキーさんと戦いたいって、そのためになんとかしてコントローラーを構築するんだって、そのコトで頭がいっぱいだった。 研修で習ったコト……霊力(ちから)を発動させるには、印を組んで言霊を唱える……これが基本だって教えてもらった。 慣れてくれば言霊だけとか、印だけとか、簡略化も可能なんだって。 先代なんて印も言霊もなし、ノーモーションで発動させちゃうけど……ボクはまだ初心者だから、基本通りにいこうと思う。
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