第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

64/122
前へ
/2550ページ
次へ
左足を前に。 腰を落としたジャッキーさんは、構えを崩さず静止する。 目は鋭いものの口元は笑ってて、口角が上がり三日月の形になっていた。 黙ったままただジッとして……空気に緊張が混じり始める。 やり込んだゲームなら、すぐにでも攻撃を仕掛けたと思う。 だけど……この特殊な状況下では、まずボクのステータス(・・・・・・・・)を確認しておきたかったんだ。 デフォルトでどんな武器を持っているのか、属性はなんなのか、マックスライフはいくつなのか、それによって戦い方が変わる。 だから、ジャッキーさんが動かない今のうちに見ておくのがいいかなって。 【マジカル陰陽師】でアカウントを持っていないボクだから、操作は完全に勘頼りだった。 でもね、伊達にトモダチが少ない訳じゃないよ。 今まで……学校や会社が休みの日、誰とも会う予定がないなんて珍しくもなんともなかった。 その分一人でたくさんのゲームをしてきたし、短い間だったけど作る側にもいた……なんとなくわかるんだ。 これかな、記号ボタンの一つを押すと……やっぱりだ。 ボクの正面、斜め上に大きなステータス画面が現れた。 そこの縦1/3(3分の1)にボクの全身写真(デジ絵ではない)、残り2/3(3分の2)のスペースに横書きでステータスが記されていた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【深渡瀬(らん)】 Lv:???/99(MAX) ライフ:596 攻撃力:482 防御力:275 霊力:2301 すばやさ:55 属性:風 職業:会社員(株式会社おくりび) 武器:なし 装飾品:鉄板入りのスニーカー ~~~~~~~~~~~~~~~~~ レベルは不明、ライフ、攻撃力、防御力はそこそこ、霊力はまぁまぁ。 気になるのは”すばやさ”で、これが極端に低い。 攻撃を受ける時は注意が必要だ。 モタついて避けきれなければ、無駄にライフが削られてしまう。 厄介だけど風属性をうまく使えばカバーできるはず。 武器は無し、か……これは痛い。 出来れば霊力(ちから)で何か武器を構築したい所だけど、戦いながらの構築はボクに難しいかも。 とりあえずは体術でどうにかするしかないだろう。 あと装飾品の”鉄板入りのスニーカー”、これは使い道がありそうだ。 それと……職業は……会社員か……そのまんまだね。 うん、これだけ確認できれば十分だ。 ステータス画面を閉じたボクは目線をジャッキーさんに移動させる。 カンフーキャラは余裕の笑みで静止中、と思っていたら…… 「ステータスの確認は出来たかな? (らん)くんのタイミングで来ればいいよ。なんならこれから準備体操でもするかい? 待っていてあげる」 「!…………お気遣いいただいてありがとうございます。だけど……この後はそういうのいりませんから」 「言うじゃない。オジサン、若い子に嫌われないよう気を遣ったんだけど……余計なお世話だったようだねッ!」 そう笑ったジャッキーさんは、ダンッといきなり踏み込んで、瞬き一つの速度でもって、棒の先端をボクの鼻先に突き付けた。 あたる……! それを避けるため、握ったコントローラー、ボタンとスティックを同時にはじく。 途端、ボクの霊体(からだ)はブリッジのように反り返り、凶器の先端を寸での所で避けたのだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加