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左足を前に。
腰を落としたジャッキーさんは、構えを崩さず静止する。
目は鋭いものの口元は笑ってて、口角が上がり三日月の形になっていた。
黙ったままただジッとして……空気に緊張が混じり始める。
やり込んだゲームなら、すぐにでも攻撃を仕掛けたと思う。
だけど……この特殊な状況下では、まずボクのステータスを確認しておきたかったんだ。
デフォルトでどんな武器を持っているのか、属性はなんなのか、マックスライフはいくつなのか、それによって戦い方が変わる。
だから、ジャッキーさんが動かない今のうちに見ておくのがいいかなって。
【マジカル陰陽師】でアカウントを持っていないボクだから、操作は完全に勘頼りだった。
でもね、伊達にトモダチが少ない訳じゃないよ。
今まで……学校や会社が休みの日、誰とも会う予定がないなんて珍しくもなんともなかった。
その分一人でたくさんのゲームをしてきたし、短い間だったけど作る側にもいた……なんとなくわかるんだ。
これかな、記号ボタンの一つを押すと……やっぱりだ。
ボクの正面、斜め上に大きなステータス画面が現れた。
そこの縦1/3にボクの全身写真(デジ絵ではない)、残り2/3のスペースに横書きでステータスが記されていた。
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【深渡瀬嵐】
Lv:???/99(MAX)
ライフ:596
攻撃力:482
防御力:275
霊力:2301
すばやさ:55
属性:風
職業:会社員(株式会社おくりび)
武器:なし
装飾品:鉄板入りのスニーカー
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レベルは不明、ライフ、攻撃力、防御力はそこそこ、霊力はまぁまぁ。
気になるのは”すばやさ”で、これが極端に低い。
攻撃を受ける時は注意が必要だ。
モタついて避けきれなければ、無駄にライフが削られてしまう。
厄介だけど風属性をうまく使えばカバーできるはず。
武器は無し、か……これは痛い。
出来れば霊力で何か武器を構築したい所だけど、戦いながらの構築はボクに難しいかも。
とりあえずは体術でどうにかするしかないだろう。
あと装飾品の”鉄板入りのスニーカー”、これは使い道がありそうだ。
それと……職業は……会社員か……そのまんまだね。
うん、これだけ確認できれば十分だ。
ステータス画面を閉じたボクは目線をジャッキーさんに移動させる。
カンフーキャラは余裕の笑みで静止中、と思っていたら……
「ステータスの確認は出来たかな? 嵐くんのタイミングで来ればいいよ。なんならこれから準備体操でもするかい? 待っていてあげる」
「!…………お気遣いいただいてありがとうございます。だけど……この後はそういうのいりませんから」
「言うじゃない。オジサン、若い子に嫌われないよう気を遣ったんだけど……余計なお世話だったようだねッ!」
そう笑ったジャッキーさんは、ダンッといきなり踏み込んで、瞬き一つの速度でもって、棒の先端をボクの鼻先に突き付けた。
あたる……!
それを避けるため、握ったコントローラー、ボタンとスティックを同時にはじく。
途端、ボクの霊体はブリッジのように反り返り、凶器の先端を寸での所で避けたのだ。
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