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「あれ? 嵐くんは【マジカル陰陽師】のアカウント持ってないはずだよね? どうして避け方知ってるの?」
お気楽な質問だ。
ボクの鼻を潰し損ねたカンフーキャラに悪びれた様子はない。
棒を避けて反らした霊体を、腹筋の力……ではなく、□ボタンの二連打ですばやく起こし、
「勘ですよ、」
とだけ答えた。
「勘ねぇ……って、ん? それだけ? ずいぶんと素っ気ない答えだな。もしかして、やっぱりオジサン嫌われちゃった?」
ジャッキーさんはボクの答えに物足りなそうたけど……ゴメンナサイ。
正直言って、ちゃんと答える余裕がないんです。
だって……だってさ、さっき見たボクのステータス。
なんでデフォルトで武器がないのか、攻撃を避けたコトで理由がわかっちゃったんだもん。
はぁ……そりゃあ何にもないハズだよ。
武器があっても使えないもん。
これはますます攻撃を食らう訳にはいかないな。
避けて避けて避けまくるんだ。
その間になんとか手を考えなくっちゃ。
「嵐くんに嫌われたくないなぁ。もっと親睦を深めないとだね。それには……!」
言ったが早いか。
考える間もない次の瞬間。
ジャッキーさんは目の前にいた。
心臓が躍り狂う、コントローラーを持つ手に汗が滲む。
「ゲーマー同士、バトルで解り合おうじゃないか」
ザッ! と土煙が舞ったのと同時。
ジャッキーさんの片脚が頭上高く上がっていた。
口の中が一気に乾く。
全身に鳥肌が立つ。
緊張のボクとは正反対。
ゴキゲンなカンフーキャラは、なにやら一人でしゃべりはじめ……
「〇→右矢印→□→下矢印→上、」
テンション高く、歌うように口ずさんでいるのは……コンボだ……!
きっとリアルで、ジャッキーさんは、今まさに、大技コンボを、入れてるんだ!
ピ……ピンチ!
このモーション、このコンボ、来るのはきっと……!
「そして△でぇ……ハイッ! コンプリートッ!」
天から巨大な丸太が落ちるみたいに、ジャッキーさんの鋼の脚がボクに向かって打ち下ろされる。
コレ……かかと落としだ……!
こんなの食らったら潜在能力引き出すどころか、一撃で【you……die……(ゲームオーバー)】になってしまう!
ジャッキーさんと戦ってみたいです! とか言っといてカッコ悪すぎるよ!
ボクはキラッキラのマイコントローラー、これの△ボタンとL1ボタンを連打しまくった!
結果、
コロリーン
ボクは”一撃必殺のかかと落とし”を、受け身を取りながら地味に避けるコトに成功!
はぁぁぁ……危なかった……
ジャッキーさん、しょっぱなから容赦ないよ……
ピ、ピンチだ……ど、どうしよう……
ボクだって反撃したいよ……大技コンボもいっぱい知ってる。
でも……手がふさがってるんだ。
コントローラーがなくちゃ”戦いバージョン”で自分を動かせないボクは……逃げるコトしか出来ない……!
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