第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「あれ? (らん)くんは【マジカル陰陽師】のアカウント持ってないはずだよね? どうして避け方知ってるの?」 お気楽な質問だ。 ボクの鼻を潰し損ねたカンフーキャラに悪びれた様子はない。 棒を避けて反らした霊体(からだ)を、腹筋の力……ではなく、(四角)ボタンの二連打ですばやく起こし、 「勘ですよ、」 とだけ答えた。 「勘ねぇ……って、ん? それだけ? ずいぶんと素っ気ない答えだな。もしかして、やっぱりオジサン嫌われちゃった?」 ジャッキーさんはボクの答えに物足りなそうたけど……ゴメンナサイ。 正直言って、ちゃんと答える余裕がないんです。 だって……だってさ、さっき見たボクのステータス。 なんでデフォルトで武器がないのか、攻撃を避けたコトで理由がわかっちゃったんだもん。 はぁ……そりゃあ何にもないハズだよ。 武器があっても使えないもん。 これはますます攻撃を食らう訳にはいかないな。 避けて避けて避けまくるんだ。 その間になんとか手を考えなくっちゃ。 「(らん)くんに嫌われたくないなぁ。もっと親睦を深めないとだね。それには……!」 言ったが早いか。 考える間もない次の瞬間。 ジャッキーさんは目の前にいた。 心臓が躍り狂う、コントローラーを持つ手に汗が滲む。 「ゲーマー同士、バトルで解り合おうじゃないか」 ザッ! と土煙が舞ったのと同時。 ジャッキーさんの片脚が頭上高く上がっていた。 口の中が一気に乾く。 全身に鳥肌が立つ。 緊張のボクとは正反対。 ゴキゲンなカンフーキャラは、なにやら一人でしゃべりはじめ…… 「()→右矢印→(四角)→下矢印→上、」 テンション高く、歌うように口ずさんでいるのは……コンボだ……! きっとリアルで、ジャッキーさんは、今まさに、大技コンボを、入れてるんだ! ピ……ピンチ! このモーション、このコンボ、来るのはきっと……! 「そして(三角)でぇ……ハイッ! コンプリートッ!」 天から巨大な丸太が落ちるみたいに、ジャッキーさんの鋼の脚がボクに向かって打ち下ろされる。 コレ……かかと落としだ……! こんなの食らったら潜在能力引き出すどころか、一撃で【you……die……(ゲームオーバー)】になってしまう! ジャッキーさんと戦ってみたいです! とか言っといてカッコ悪すぎるよ! ボクはキラッキラのマイコントローラー、これの(三角)ボタンとL1ボタンを連打しまくった! 結果、 コロリーン ボクは”一撃必殺のかかと落とし”を、受け身を取りながら地味に避けるコトに成功! はぁぁぁ……危なかった…… ジャッキーさん、しょっぱなから容赦ないよ…… ピ、ピンチだ……ど、どうしよう…… ボクだって反撃したいよ……大技コンボもいっぱい知ってる。 でも……手がふさがってるんだ。 コントローラーがなくちゃ”戦いバージョン”で自分を動かせないボクは……逃げるコトしか出来ない……!
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