第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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この後の戦いでボクは、鉄板入りのスニーカーを酷使しまくったんだ。 ジャッキーさんが振り落とす長い棒も、ゴツゴツの拳もなにもかも、受けるのもかわすのもすべてが脚だった。 コントローラーの操作正解率は9割といったトコロ。 ゲーマー歴とボッチ歴がイコールであり、元ゲーム会社社員であり、幼い頃からゲーオタなボクだもの。 9割の正解率は当たり前、むしろ低いと感じたくらい。 初見のゲームも10年やり込んだレベルでプレイしてこそホンモノのゲーマーだから…………な、なんてね、ちょ、ちょっと言いすぎかな。 昔からボッチでトモダチ少ないから、一人で出来るゲームとかプログラムとかで遊んでただけなのに……な、なんか、ご、ごめん、ボク、大きなコト言っちゃったね。 でも……こんなふうに調子に乗ってしまうくらい、ジャッキーさんとの戦いが楽しかったんだよ。 リアルに帰ってからもジャッキーさんとはゲームをしたけど、それもすっごく楽しかったけど、あの時の戦いが一番ドキドキしてハラハラして……最高だったんだ。 だって……あんなに特殊な状況は今までになかったんだもん。 いつもなら……安全な部屋の中で、画面の向こうの敵キャラ達と戦ってた。 と言っても戦うのはボクじゃないけど。 ボクは操作をするだけ。 叩かれるのも蹴られるのも、ぜんぶボクが選んだ画面の中のキャラなんだよね。 だけど……あの夜は違ったの。 操作するのもボク、操作されるキャラもボク自身(・・・・・・・・・・・・・)だったんだもの。 もうねぇ……ジャッキーさんがボスキャラに見えたよ。 大きな身体でパワー系かと思わせて動きは機敏。 すごく強くて、なのにボクは両手が使えないから、ゲームモードは超ハード。 正直……ピンチかも……って弱気になった。 だって弱気にもなるよ。 長い棒をプロペラみたい回して迫ってきた時……風を切る音がすごく怖かったし、当たっちゃうって焦ったし、もーやだ来ないでーって思ったし。 かかと落としをされそうになった時も、上がる土煙とか……鋼の脚が迫ってくるおっかなさとか……あんなの初めてだった。 それで気が付いたんだ。 操作される側のキャラは(・・・・・・・・・・・)、いつもこんなに大変な思いをして戦ってたんだなって。 あ……ご、ごめん、おかしいよね、たかがゲームなのにこんな気持ち。 でも、なんか、そんなふうに思っちゃったんだ。 本当なら……コントローラーを構築した時。 リアルでするゲームみたいに、戦わせる為のキャラを、操作するボクとは別に構築すれば……両手両足フルに使って戦えたんだ。 でも……複雑なモノを構築するのは初めてで、そんなコトぜんぜん思い浮かばなくて、コントローラーさえあれば戦えるとしか頭になくて…… ……ん、でもな、たとえそれに気付いたとしても、あの頃のボクのスキルじゃあ、二つの構築は出来なかっただろうから、やっぱり結果は同じ。 足技だけで戦ったんだろうな。
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