2366人が本棚に入れています
本棚に追加
この後の戦いでボクは、鉄板入りのスニーカーを酷使しまくったんだ。
ジャッキーさんが振り落とす長い棒も、ゴツゴツの拳もなにもかも、受けるのもかわすのもすべてが脚だった。
コントローラーの操作正解率は9割といったトコロ。
ゲーマー歴とボッチ歴がイコールであり、元ゲーム会社社員であり、幼い頃からゲーオタなボクだもの。
9割の正解率は当たり前、むしろ低いと感じたくらい。
初見のゲームも10年やり込んだレベルでプレイしてこそホンモノのゲーマーだから…………な、なんてね、ちょ、ちょっと言いすぎかな。
昔からボッチでトモダチ少ないから、一人で出来るゲームとかプログラムとかで遊んでただけなのに……な、なんか、ご、ごめん、ボク、大きなコト言っちゃったね。
でも……こんなふうに調子に乗ってしまうくらい、ジャッキーさんとの戦いが楽しかったんだよ。
リアルに帰ってからもジャッキーさんとはゲームをしたけど、それもすっごく楽しかったけど、あの時の戦いが一番ドキドキしてハラハラして……最高だったんだ。
だって……あんなに特殊な状況は今までになかったんだもん。
いつもなら……安全な部屋の中で、画面の向こうの敵キャラ達と戦ってた。
と言っても戦うのはボクじゃないけど。
ボクは操作をするだけ。
叩かれるのも蹴られるのも、ぜんぶボクが選んだ画面の中のキャラなんだよね。
だけど……あの夜は違ったの。
操作するのもボク、操作されるキャラもボク自身だったんだもの。
もうねぇ……ジャッキーさんがボスキャラに見えたよ。
大きな身体でパワー系かと思わせて動きは機敏。
すごく強くて、なのにボクは両手が使えないから、ゲームモードは超ハード。
正直……ピンチかも……って弱気になった。
だって弱気にもなるよ。
長い棒をプロペラみたい回して迫ってきた時……風を切る音がすごく怖かったし、当たっちゃうって焦ったし、もーやだ来ないでーって思ったし。
かかと落としをされそうになった時も、上がる土煙とか……鋼の脚が迫ってくるおっかなさとか……あんなの初めてだった。
それで気が付いたんだ。
操作される側のキャラは、いつもこんなに大変な思いをして戦ってたんだなって。
あ……ご、ごめん、おかしいよね、たかがゲームなのにこんな気持ち。
でも、なんか、そんなふうに思っちゃったんだ。
本当なら……コントローラーを構築した時。
リアルでするゲームみたいに、戦わせる為のキャラを、操作するボクとは別に構築すれば……両手両足フルに使って戦えたんだ。
でも……複雑なモノを構築するのは初めてで、そんなコトぜんぜん思い浮かばなくて、コントローラーさえあれば戦えるとしか頭になくて……
……ん、でもな、たとえそれに気付いたとしても、あの頃のボクのスキルじゃあ、二つの構築は出来なかっただろうから、やっぱり結果は同じ。
足技だけで戦ったんだろうな。
最初のコメントを投稿しよう!