第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「まったく、ちょこまかとッ! 落とせそうで……落とせない! (らん)くんは思わせぶりな女みたいだなっ!」 ジャッキーさんの長い棒……そう、六尺棒は狂暴な蛇と化していた。 時に真っすぐ、時にしなる。 突きの猛撃は、蛇が数百匹に増えたような錯覚を起こし、執拗にボクを狙う。 「女って……! ボ、ボクは男です! ヘンなコト言わないでくださいっ!」 ジャッキーさんの軽口に目一杯の抗議をしながら、ボクは足だけで攻撃をいなしていた。 片足を地に着けてバランスを取りながら、反対側の片足で狂暴な蛇を片っ端から受け流す。 だいぶ慣れた、ジャッキーさんの動きも、ボクの操作も(・・・・・・)。 両手が使えなくてもやれるんだって見せてやる。 「ホントに器用に防御するよね。オジサン、自信なくしちゃうよ。でも、さすがにこれは防御出来ないでしょ?」 ニヤリと笑ったジャッキーさんは、六尺棒を片手に持ち替えフェンシングのような構えを取った。 そして…… 「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァッ!」 あ、あれれ? どこかで聞いたような……スタ……プラチ…… そう思ったのはほんの一瞬。 思い出す時間すらなかったの。 超高速な手の動き、肩から先が溶けて消えてる。 風を切る音が耳に痛くて、蛇は数万匹に増えていた。 ガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!! 防御出来たのは最初の数秒、 それ以降はとてもじゃないけど防げなかった、 ボクの肩を、胸を、お腹を、そして足を、容赦なくぶっ叩く、潰しにきてる……! 足技だけで互角に戦えていた、そう思ってたのはボクだけだったの? 意識がたびたび途切れる中、手加減してもらってたのかなって、そう思ったら悔しくて……なのに手はもちろん足も出ないんだ。 だって光の速さの六尺棒は溶け切って、目が追い付かないんだもの。 避けられず、受け止められず、されるがままに打たれるだけ。 朦朧とする中、 「ジャッキー、やりすぎだ!」 弥生さんの慌てた声が聞こえて、心配されてるって思ったら自分が情けなくなったの。 リアルの喧嘩ならともかく、ゲームのバトルなのに、ゲームだけは誰にも負けないって自負があったのに。 視界の端に、弥生さんが回復霊術の準備をしてるのが見えた。 きっとボクを助けるつもりなんだ。 ありがたいんだけど、でも、なんか……それをされたらズルをするみたいで、そうなったらもうジャッキーさんとは戦えないって、だからやめてって言いたくて、なのに、そんなコト言う余裕もなくて……そしたら……受け身をとりながら社長が転がってきて…… 「ヤメロ、弥生。ほっとけ、このままやらせてやれ」 そう言ってとめてくれたの。 「だってさ! このままじゃ(らん)ちゃんヤバイよ! ジャッキーもジャッキーだ、(らん)ちゃん相手にムキになるなっつの! アイツ本来の目的を忘れてる、アタシらは(らん)ちゃんを助ける為にココに来たんだろ? ガチバトルする為じゃないよ、」 「ははっ! 弥生、おまえずいぶんと丸くなったなぁ。昔の弥生はまんまヤンキー、喧嘩上等だったのによ。もしかして、好きなオトコでも出来たんですかぁ? 後輩庇ってケンカを止めるなんてカワイイとこ……って待て待て待て、殴るな! 俺一人で起き上がれねぇって言ってんだろが! やっぱカワイクねぇわ!」 「ウルセェ! 誠にカワイイなんて思われたら逆にキモイわっ!」 「とにかくよ、いいじゃねぇか。(らん)が追い詰められたら、それこそ潜在能力が開花するかもしれねぇし、このまま様子見ようぜ!」 「でも……!」 「大丈夫だよ、死にゃあしねぇ。それに(らん)はゲームの中じゃ(つえ)えんだろ? これからだよ。そうだろ? (らん)!」
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