第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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社長……ありがとうございます、 こんなに劣勢なボクを信じてくれてる……まだ勝機があると思ってくれてる……うん……まだだ、まだ頑張れる…… ボクの顔の少し上。 そこには【-28】【-34】【-72】【-51】と削られるライフの数字が浮かんでは消えていた。 急がなくちゃ、なんとかしてジャッキーさんの六尺棒を止めるんだ。 だけど……どうやって? 手は使えない、頼りの足は防ぎきれない、この速さじゃ目も追いつかない。 追い詰められる……ううん、だめだ落ち着け……思い出すんだボクのステータスを。 何かヒントになるような事があるはずなんだ。 Lv???/99(MAX)……ライフ:596……攻撃力:482……防御力:275……霊力:2301……すばやさ:55…………属性:風……風? そうだ、ボクの属性は風だった。 ジャッキーさんの猛撃はビュンビュン風を切っている。 それはカマイタチのように、ボクの肌をかすめてるんだ。 この風……ボクのモノにならないだろうか……? ゲームの中で魔法を使うならMP(マジックポイント)が必要になる。 ここ【マジカル陰陽師】で使うのは”魔法”じゃない、”霊力”だ。 ボクのステータスで霊力は2301とあった。 コントローラーのボタンをいくつかを押して、チュートリアル画面を開いてみた……けど、攻撃が激しくてまともに読めない。 ボクはクルリとターンして、痛みに耐えて斜め読み。 【…………霊力の使い方は言霊。キミが一番カッコイイと思う言霊を唱えながら()ボタンとL1、L2ボタンの同時押しをしてみよう!……】 い、一番カッコイイと思う言霊……? む、難しいな、でも、頑張る。 ボクは指定のボタンを同時に押した、で、ものすごーく小さい声で言霊を唱えた(なんて唱えたかは内緒だよ、恥ずかしくて言えない……)。 唱えて十を数えた時。 ボクの足元に楕円に絡む渦巻を見たの。 急に出てきてびっくりしたけど、すぐにわかった。 ボクが呼んだ”風”なんだって。 でも変わった”風”だったよ。 だって懐っこい子犬みたいだったんだ。 クルクルクルクルまとわりついて、ボクにくっつき上がってきたの。 イメージは小さな台風。 その台風は意思を持っているのか、ボクの耳元でヒュンヒュンと囁いたんだ。 それがぜんぜんイヤじゃなくて、くすぐったくて優しいの。 この小さな台風はボクの味方だ……って思った。 「ねぇ、ボクを助けてくれる?」 小さな台風は返事をしなかったけど、そう聞いた途端、瞬時突風と化し……ジャッキーさんの六尺棒を吹き飛ばしたんだ。
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