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そ、そうなの……?
フーちゃん、名前気に入ってくれたの?
ひねりもない単純な名前なのに……あ、で、でも……ボクの名前も”嵐”の音読みで”嵐”だから……おそろいみたいだ。
それから……その、フーちゃんは、ボ、ボクなんかと、ツーマンセルを組んでくれるの……?
一緒に戦ってくれるの?
名前を付けただけなのに?
う、嬉しいけど、ありがたいけど、でも、
「……ホントにいいの?」
ボクがそう聞くと、顔のすぐそば、そよ風を吹き付けるけど、フーちゃんは”いい”とも”ダメ”とも答えない。
それでも、風の子はどこにも行こうとはしなかった。
……
…………
………………
「嵐くん! 自分、思うんだッ! フーちゃんとツーマンセルというのは……うわっ! あぶっ! ああもうっ! ズルくなーい!?」
た、確かに。
ボクも少しだけズルイかなって……思う。
ツーマンセルの頼れる相方フーちゃんは、バトルを全力でサポートしてくれるんだけど、至れり尽くせりすぎるんだ。
両手が使えないボクは防御も攻撃も足技オンリー。
攻撃時、僕がキックのモーションに入ると、フーちゃんはすぐさま足に絡みついて突風を起こしてくれる。
すると当然威力は倍々。
何度ジャッキーさんを吹き飛ばしたコトか。
防御もそう。
フーちゃんはジャッキーさんの攻撃を片っ端からはじき返すものだから、ボクのライフはぜんぜん減らない。
だから出るの、さっきの文句が……「ズルくなーい!?」って。
「ご、ごめんなさい! だけど、ボクが操作出来るのはボクだけなんです! フーちゃんは、フーちゃんの意思で動いてるから……ボクがどうこう出来なくて……フ、フーちゃん! もう少し手加減してあげ……って……あ、いえ、違うんです! 今のは言葉のアヤといいますか、その、」
ピキッ!
あ……まずい……今、ジャッキーさんの血管がキレる音が聞こえた気がする。
うっかり言っちゃったけど「手加減」というワードはゲーマーにとって禁句の一つ……しまった……案の定ジャッキーさんはお怒り&イライラモードに突入し……
「嵐くん、言うじゃない。別に自分、そこまでピンチじゃないからね? 手加減なんてしなくていいからね? というか、フーちゃんと組んでからの嵐くん、ちょっと調子に乗ってるように見える、……って、うわぁっ!」
と言いかけたものの……
口を尖らせ付ける文句は突風に邪魔されて、最後まで言い切るコトが出来なかった。
……
…………
………………
それから長い時間、ボク達はバトルを繰り広げていたの。
フーちゃんとボクのツーマンセル。
文句を言いつつ楽しそうなジャッキーさん。
大きな声で応援してくれる社長と弥生さん。
楽しいな……すごくすごく楽しいよ。
顔が赤くなる事も気にならないで、思いっきりバトルが出来るなんて。
迷い込んだネットの世界。
まさかこんなふうになるなんて思いもしなかった。
ああ、もういっそ帰らなくてもいいんじゃないかな……?
このままネットの世界から戻れなかったら、みんなとずっと一緒にいれるもの。
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