第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ やっぱり解決方法は肉弾戦だったか(バーチャルだけど)。 いやはや、らしいっちゃあらしい。 しかも毎回それで解決するんだから大したもんだよ。 ま、僕や(らん)さんみたいな平和主義にはけっこうヘビーなんだけどさ。 「いやぁ……大変だったねぇ。なにが大変って、ネットの世界に迷い込んだのもそうだけど、あの三人についてくのが一番大変だったと思うよ、あはは。それで、その時の放電でリアルに帰ってこれたの?」 数メートル先、僕に背を向ける(らん)さんに聞いてみた。 すると、 「う、うん。思いっきり放電して、すぐにそれを掴んだんだ。そ、そしたらギューンって引き上げられて……気が付いたら……ボクはリアルに戻ってたの。目を開けたら先代が『おかえり』って言ってくれて……」 そう答えてくれた後、(らん)さんは聞こえるか聞こえないか小さな声で「ふふ」と笑った。 無事にリアルに戻ってこれて、そこに先代がいてくれて嬉しかったんだろうな。 社長も弥生さんもジャッキーさんも、話は脱線しまくるし、ウルサイし濃いけど、わざわざ来てくれて、絶対に助けるって言ってくれて、どんなに心強かっただろう……ウルサイけど、濃いけど。 「そ、その後……どうしてボクの放電でネットの中に入れるのか……みんなでいっぱい考えたんだけど、どうしてもわからなくって結局そこは、今も謎のままなの。きっと先代の仮説が合ってそうなんだけど……社長も弥生さんも、難しい事はもういいよって」 「あの二人なら言いそうだな。 でもそっか。はっきり謎が解けたんじゃないんだね。疑問は大抵グー〇ル先生に聞けばわかるけど、さすがに【霊力者、放電、ネットの世界に入れるんだけど】こんなワードで検索しても答えは出ないだろうからねぇ。だけど大丈夫なの? ネットの世界に行き来して身体や霊体(からだ)に悪影響はないの?」 「う、うん。ありがとう。それは大丈夫。みんなも心配してくれて、身体は病院で検査もしたし、霊体(からだ)の方は先代に視てもらったけど、問題なかった。念のため今も定期的に検査してるけどね」 そうか、それなら安心だ。 そんなスキル便利だけど、(らん)さんに悪影響があるなら意味がないからね。 「ボクは……放電でネットの世界に入り込んじゃって、それでみんなを巻き込んで大騒ぎしちゃったから、も、もう二度と放電はしないって思ってたんだ。だけど……社長もジャッキーさんも弥生さんも……そんなのもったいない! せっかくのスキルなんだから、ボクの意思で行き来出来るように訓練しようって……それで……な、なぜか格闘技をやらされたんだ」 「そこで格闘技? え? なんで? 霊力(ちから)のコントロールとかじゃなくて?」 「う、うん。社長がね『大抵の事は身体を鍛えれば解決出来る』って……ほ、本当かな? って思ったけど、弥生さんも『一理ある。アタシも霊力(ちから)に目覚めた後、ひたすら悪霊相手に喧嘩して鍛えた』って言うんだ。ジャッキーさんも『大いに賛成』って。だからボク……みんなの言う事を信じて頑張ったの」 「頑張ったって、や、そこはエライと思うけど、でもさ、格闘技とネットダイブのスキルとじゃ関連性なくない? てか、突っ込もうよ。(らん)さん素直すぎだろ。そんで? 成果はあったの? ははは、さすがにないよね? 別の訓練にシフトしたんでしょ?」 いくらなんでもそりゃないわ。 これで成果が出ちゃったら、”なんでも筋肉で解決出来る説”が証明されちゃう……! と思っていたら。 「……ボクね、社長ってスゴイなって思うの。だって……訓練開始してから半年で……リアルとネットを自由に行き来出来るようしてくれたんだもん……!」 (らん)さんの声は弾んでいた。 その声を聴いたのと同時、僕の中で ”なんでも筋肉で解決出来る説” が証明されてしまったのだ……マジか。
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