第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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それにしてもだ。 (らん)さん、けっこうたくさん話してくれる。 そりゃ、距離は置かれてるけど、背中向けて顔見てくれないけど、それでもこんなに、しかも(らん)さん自身の話をしてくれるのが嬉しかった。 だけど、あえてそこには触れないようにしていた。 わざわざそんなコト言ってしまって意識させてしまったら、(らん)さん、また話せなくなっちゃうかもしれないもの。 ま、今日はキーマンさんも一緒だからね。 僕と二人っきりの現場だったらこうはいかなかっただろう。 良かった、最初はスリーマンセルで。 あ、そういえばキーマンさんどうしてる? 途中から「マルコー、ポーロー」って聞こえなくなったけど。 やけに静かだなと辺りを見渡せば……いた。 キーマンさんはたくさんある木々の一本。 そこの根元にしゃがみ込んでいた。 その後ろ姿は静止したまま俯いてるように見える。 なにか見つけた……?  もしかして、とうとうバッドベアー(やんちゃなクマ)を発見したとか……? 「ねぇ、(らん)さん。あそこ見て、木のトコロ。キーマンさんがしゃがみ込んだまま大人しくしてる。さっきまでずっとなんか喋ってたのに。静かにしてるとなんだか心配になっちゃうよ。ちょっと行ってみない?」 僕がそう言うと(らん)さんも、 「そ、そうだね……キーちゃんが静かだと不安になる。行ってみよう」 と、こちらに振り向いた。 目が合うと(らん)さんは、途端ギョッとした顔になり視線をそらしてしまう。 うぅ……いっぱい話してくれて嬉しかった分、なんだか淋しい。 ともかく気を取り直し、歩いて数十歩程度の距離を行く。 空からは、青々と重なる葉の隙間から落ちる陽の光。 それがキーマンさんのウェーブがかった茶色の髪をワントーン明るくさせて、男性の髪だけどツヤツヤでキレイだな……なんて見入ってしまう。 そんなミスターキューティクルの背中、僕と(らん)さんは二人して声をかけた。 「キーマンさん、」 「キーちゃん」 するとキーマンさんはしゃがんだままゆっくりと振り向いてニヤリと笑った。 「ジェーン、チェリーボーイ、待たせたな。ココにいたよ。みどりにちょっかいを出すバッドベアー(やんちゃなクマ)。かくれんぼは終わりだ、ファウーーーンド イット(見つけた)!」 えぇ!? もう!? この人ホントに探知の達人だ、先代や社長の言った通りだ……! びくりしてキーマンさんの肩越しから覗き込む…… と、そこには一見それと分からない、ボロボロな黒い塊……古すぎるテディベアがあった。
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