第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ 『ガァァァアアアアアアアッ!!』 バッドベアー(やんちゃなクマ)(大)の咆哮が、さっきよりも近くに感じる。 クマの動きは鈍いけど、立ち止まっている訳じゃないのだ。 遅かれ早かれ見つかってしまうだろう。 モタモタしてはいられない。 「しゃ、社長から聞いたけど、お、岡村さんのスキルは、霊体への物理干渉なんだよね?」 キーマンさんから貰った緑のコントロールベース。 これを塗った効果だろう、今の(らん)さんの顔は赤くない。 だけど耳はまるで火の色だ。 ホントは顔も赤くって、緊張して辛いんだろうに。 それでも一生懸命話してくれる。 ありがとね。 その気持ちに応えるよ、僕も全力で応えるからね。 「うん、そうだよ。付け加えるなら霊から僕への(・・・・・・)物理干渉も可能なんだ。だから生者同士の接触となんら変わりがないの」 僕がそう答えると(らん)さんはすごく驚いて、 「霊からも触れるの?……そ、そんな事が可能なんだ……それって怖いよね」 と心配そうに眉を寄せた。 そしてこう続ける。 「ほ、ほかのスキルは? お、岡村さんが出来るコト、ぜんぶ教えて」 そこで僕は霊矢が使える事を話した。 「水渦(みうず)さんから教わったんだ。僕の霊矢は赤色で、放つ本数に制限は無い。だから無限に撃つ事が出来るの。ただし発動までに、少し時間がかかっちゃう。工程長めの印をフルに結んで、一本目が撃てるまでの所要時間は3分から5分くらい。まだ習得したばかりだから、水渦(みうず)さんみたいに印をスキップする事は出来なくて……それで、ごめん。今の僕に出来るコトはこれだけなの、」 霊矢しか撃てない……カッコ悪いけど正直に話した。 スキルを偽って、出来ないコトまで出来ると言ったら(や、そんなコト言うつもりはないけどさ)キーマンさんや(らん)さんに迷惑がかかる。 そのせいで二人に危険が及ぶかもしれない。 そんなのは絶対にいやだ。 だったらカッコ悪くても正確に話した方がいい。 「ま、まだ霊媒師になって二か月でしょう? 霊矢が撃てるだけでもすごいよ。し、しかも無制限だなんて充分なスキルだ。……ん、そうだな、岡村さんは遠戦向きかも」 「エンセンムキ?」 「うん、遠くで戦うと書いて”遠戦”。……ねぇ、こうしよう。岡村さんは十分な距離を取って、霊矢をいっぱい撃ち込むの。それでクマちゃんの霊力(ちから)を出来るだけ削ってほしいんだ。削ってくれたら、その後はボクが行く。距離を詰めて接近戦に持ち込んで……滅さずに拘束するから」 拘束か。 (らん)さん、バッドベアー(やんちゃなクマ)(大)を、すぐに滅するつもりはないんだな。 まずは話を聞こうとしてるんだ。 ははは……こんなん、水渦(みうず)さんにイライラされる訳だ。 彼女なら迷わず滅するだろうからねぇ。 「うん、わかった。その流れでいこう」 凝った作戦を練る時間はない。 シンプルイズベストだ。
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