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「ホワッツ……? さっきから揺れてる気がする。メイビー……地震か? アーウチ、小屋には潜れるデスクがない、これはピンチだぜ! hahahahah」
なんて呑気に笑うキーマンさんを横目で見つつ、僕は脳内に水渦さんの霊矢の印を再生させていた。
霊矢発動まで5分前後と時間がかかるのだ。
だったらバッドベアーと対決する前に、先に小屋で印を結んで準備をしてから挑んだ方が良い。
霊矢の印は長い工程が必要で、僕は注意しながら結んでいた。
小屋の外にはバッドベアーの咆哮。
壁から覗けばウロウロしてる。
どうやらまだ僕達を探してるようだ。
急がなくちゃ……アイツが小屋に気付く前に外に出たい。
霊の姿が視えない聞こえないキーマンさんには、戦闘中だけ小屋に残ってもらうつもりだもの。
だからバッドベアー(大)に見つかりたくないんだ。
はやる気持ちを抑え印を組む。
手指を曲げて伸ばして絡めて解いて、ひたすらこれを繰り返し数分が経った頃……来た。
ああ……これだ、この感覚……前の時と同じだ。
僕の中の奥底から、沸騰した血液に似た何かが、五指に向かって、速度をもって、駆け上がってくるんだ。
ビリッ!
一瞬、電気に撃たれたようなインパクトがあった。
濡れた手で電源プラグに触れたような、鋭い痛みと痺れるような感覚だ。
印は……間違えずに結べただろうか?
7割の自信と3割の不安の中、両手両五指に目をやると……あ……良かった。
そこには、印はノーミスで結びきったという、確かな証拠があった。
すべての指の先端。
そこには、さっきまではなかった赤い電気が、静かに火花を散らしていた。
「お、岡村さん……! その指……す、すごいよ……お、小野坂さんみたい……!」
嵐さんは、赤く光る僕の指を子供のような顔で見つめている。
それはまるで、都会の真ん中で、いるはずのないカブトムシを見つけたような……なんでこんなコトロにいるの!? 珍しいモノ発見!
といった良い表情だ。
「あはは、だって水渦さんから教えてもらった霊矢だからねぇ。そりゃあ同じだよ。ただ、水渦さんの霊矢は蒼色、僕のは赤だ。同じ電気でも、個々のカラーが反映されるみたいだね」
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