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「トギャザー出来なくてソーリーだ。いいか、キャサリン、チェリーボーイ、よく聞いてくれ。デンジャーになったらすぐにバックしろ。ミッションも大事だが、それ以上にボーイ達が大事だからな。アンダスターン?」
キーマンさんに見送られ、おくりび内で”もっとも大人しい男性社員” 第1位(嵐さん)と第2位(僕)のツートップで外に出た。
バッドベアー(大)は……いた。
探すまでもない、霊体がデカイからすぐわかる。
ここから2時の方向、目測10メートル先だ。
『ガァァァアアアアアアッ!! ガオォォオオオオオッ!!』
咆哮と共にウロウロするバッドベアー(大)は、ドスーンドスーンと歩くたびに地面を揺らす。
さっきキーマンさんが「地震か?」と言っていたのはクマ太郎の足音を感じたのだろうな。
「嵐さん、ここで一旦バラバラになろう。僕は捕まらないように動きながら霊矢を撃ち込む。クマの霊力が弱くなったら戻るからココにいて」
僕が両手両五指、赤い火花を確認しながらそう言うと、
「わかった。ボクはココで待機だね。霊矢があるから大丈夫だと思うけど……見てるから、ピンチになったらすぐに援護に行くからね」
嵐さんは、僕と目を合わせたまま力強く答えてくれた。
そっか……ピンチになったら来てくれるのか。
先輩だけど8コも年下なのに、新人の僕を守ろうとしてくれるんだ。
ああもう、この子は本当に。
「頼もしいな、ありがと。じゃ、行ってくるっ!」
僕は前方、2時の方向にダッシュした。
霊矢はまだ撃たない。
撃てば飛んできた方向から居場所が知れてしまう。
だから離れたかったんだ。
嵐さんのいる場所とキーマンさんがいる小屋と、その両方から十分離れて、二人の安全を確保してから……撃つのだっ!
『ガァァァアアアアアアッ!! ガオォォオオオオオッ!!』
バッドベアーの咆哮が耳にビリつく。
僕は今、クマ太郎から目測10メートル弱の距離にいて、ヤツはまだ僕に気付いていない。
いいぞ!
このまま下から、背後から、不意打ちで撃ち込む。
あれだけ霊体がデカいんだ。
外す事はまずないだろう。
1度の発射で霊矢が10本。
バッドベアーの霊力をゴリゴリに削ってやる。
僕は目線を上げて巨大な標的に照準を合わせた。
と言っても指を向けるだけだけど。
バッドベアーは全然気づいていない。
地味な色のグレーのスーツはうまく僕を隠してくれているのかも。
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