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前回、弥生さんとのツーマンセルでご教授いただいた【喧嘩のアドバイス三か条】のうちの1つ。
____大声で威嚇しろ、
この教えに従い叫びながら霊矢を撃った。
僕の手から合計10本。
開いた指の形のままに、扇状に宙を切る。
ジュッ! ジュッジュッ!
焼けるような音が重なる。
視れば赤い霊矢は、10本すべて外れる事なくクマ太郎のオシリに刺さっていた。
『ガァァァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!』
クッ…………!
耳が痛い……!
すごい音量だ……!
僕はたまらず耳を塞く。
クマ太郎はオシリが痛いのか、ジタバタしながら身体を捻り、刺さった霊矢を抜こうとしている……のだが、手が短くて届かない。
矢羽に爪がかすめるも、スカッスカッと空振りしてる。
や……てか、そもそも無理だろ。
届いたとして、霊矢に対して丸い手が大きすぎるもの。
霊矢を抜こうとクマが頑張っている間、これはチャンスと距離をとって移動する。
クマ太郎の顔が遠すぎて不確かだけど、撃った僕をチラッと視た気がするんだよ。
だとすれば、いつまでもココにいるのは危険だ。
居場所を頻繁に変えた方が良いだろう。
攻撃されればモロにダメージを食らう。
ダメージだけで済めばいいけど(それもヤダけど)、致命傷、もしくは、あの巨体に踏まれでもしたら……黄泉の国でマジョリカさんに会う事になる。
それはそれで嬉しいけれど、出来ればまだ、彼女を現世に呼んでお会いしたい。
『ガァァァアアアアアアアアッ!! ウッガァァァアアアアアッ!!』
ドスンドスンッ!!
うわぁ!!
背後でクマの咆哮がして、地面が大きく揺れた。
ヨタっとしたのを立て直し、走りながら振り向けば、巨体は激しく地団駄を踏んでいるところだった。
え、ちょ、もしかして、手が届かなくて癇癪起こしちゃったのかな?
と一瞬笑いそうになったが……笑えなかった。
だってクマ太郎の目がマジなんだよ。
動きはすこぶるファニーなのに、両眼は真っ赤に燃えて『絶対に許さないクマー!(あくまでイメージです)』と、黒い怒りを溢れさせていた。
ヤバイぞ!
クマ太郎、めっちゃキョロキョロしてるじゃん!
アレ絶対僕を探してる!
捕まったら終わる、捕まったら終わる、呪文のように唱えながら、次の霊矢を撃つ為の、ナイスなポジションを探り走る。
その間もクマ太郎の地団駄は止まらなく、地震のように大地が揺れる。
走りにくいったらありゃしない。
もうこれ距離さえ取れれば、どこでもいいんじゃないか?
僕は適当なところで立ち止まり、両手両五指を巨体に向けた。
そして、
「ファイヤアウェイ!」
年甲斐もない掛け声で第二弾の霊矢を撃った。
ジュッ! ジュッ!
今度は丸い胴体の下の方、ポテッとした下っ腹に突き刺さる。
『ガァァァアアアアアアッ!!』
横一列に並ぶ霊矢を、クマ太郎は短い手で懸命に抜こうとした。
今度は手が届くようだ。
けれど、僕の最初の予想通り、霊矢に対して手も指も大きすぎて、うまく掴む事が出来ないみたい。
プルプルプルプル……スカッ! スカッ!
数度の掴み損ねで学習した(たぶん)クマ太郎は、爪先で慎重に霊矢を抜こうとするが、スカッスカッと失敗連発。
やっぱりね……どこもかしこも丸いからなぁ。
細かい作業に不向きなボディだ。
ダンダンダンダンッ!
地団駄を繰り返し、ムキーッ! となる巨大クマ。
今度はオシリの霊矢が気になりだして、霊体を捻っちゃその場でクルクル回ってる。
コレ……視たコトがあるな。
どこで視たんだっけ……って思い出したわ。
たまに大福がやるやつだ。
自分の尻尾を追いかけて、だけど捕まえられなくて、その場でクルクル回り出しちゃうの。
ん……なんかアレだな。
クマ太郎、思ってたのと少し違うかも。
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