第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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屈強な男達は、片腕でバッドベアー(やんちゃなクマ)を制しながら「コイツ誰?」と首を傾げる。 その態度はどことなく他人行儀で、いつものおふざけ感がまるでない。 話し方はフランクかもだが、視えない壁がそこにあるんだ。 二人共……ホントに僕を知らないみたい。 やだ、なんだろ、すっごく淋しい。 「岡村さんっ! 早く戻って!」 焦る(らん)さんに呼ばれた僕は「あ、うん!」と一言返し、チラリと二人を掠め視てからその場を後にした。 痛む足にムチ打って、なんとか(らん)さんに合流する。 髪と同じオレンジ色のコントローラー、これをせわしなく操作する先輩霊媒師は、 「岡村さん大丈夫? 足、痛いんでしょ?」 目線はキャラ二人に向けたままそう言った。 「うん、ごめんね。さっき捻ったみたいなんだ。でも大したコトないから心配しないで、」 本当は熱を持ってズキズキしてる、だけど精いっぱいの強がりだ。 ジャマする訳にはいかないよ。 だって今、僕の隣に立つ(らん)さんは、接近戦の真っ最中だもの(・・・・・・・・・・・)。 「とにかくクマちゃんを拘束しよう! 視てて、滅さずに捕まえてみせるから!」 ザザッ! そう宣言した(らん)さんは、肩幅強に足を開くと、挑む目でクマを視た。 その表情は喜々として、赤面症で悩む青年の面影はどこにもない。 「社長! ジャッキーさん! まずはクマちゃんと間合いを取りますっ!」 言いながら、コントローラーをはじきまくる指は溶けきって、なにをどう操作しているのか、僕にはまったくわからない。 だがそれはリアルタイムで社長の動きに反映された。 『キタキタキター!! (らん)! 今日もコンボは完璧じゃねぇかっ! ダァアッシャーーーッ!!』 『自分はオート! 今日は好き勝手にやらせてもうらうっ! アイヤーーーッ!!』 大きな拳を押える二人は、それぞれ叫びを霊力(ちから)にかえると、バッドベアー(やんちゃなクマ)を思いっきり突き上げた。 『ウガッ!? ウッガーーーーーーッ!!』 焦りまくったクマの咆哮。 悪霊も驚くのか……という所に驚いた僕の目の前。 ドオゥン! そんな鈍い音がして、三階建ての建物ライクなクマの巨体は、そのまま後ろに転がった。 背中を大地に、短い手足を上に向け、ジタジタバタバタ激しく暴れるバッドベアー(やんちゃなクマ)。 胴がほぼほぼ球体ゆえに、ひっくり返った体勢は、起き上がろうにもままならない。 霊体(からだ)を揺らしちゃ元に戻るその様は、”おきあがりこぼし”を連想させた。 「チャンスッ!」 隣の(らん)さんが独り言ち、激しくコントローラーを操作する。 それに連動した社長が動いた。 短い距離で助走をつけて、開脚で腰を落とした次の瞬間真上に飛んだ。 た……高い! 見上げた木々のてっぺん越えで飛んだ社長は、宙で霊体(からだ)をのけぞらし、両腕を頭の上に構えた。 そして落ちながら、落ちる力を自身の拳に取り込みながら____ 『ダァアッシャッ!!』 バッドベアー(やんちゃなクマ)の丸い腹に叩き込んだ。 『ッ!! ……………………ガハッ!!』 うわ……クマのおなかが谷の形にへこんでる。 その上では、ボディビルっぽいポージングを取りながら雄叫びをあげる社長。 これ……ぱっと見、どっちが悪霊だかわからないわ。
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