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上半身に赤い竜を巻き付けて、必死になって走るバッドベアー。
だがなんたって足が短いのだ、そうそう距離は稼げない。
しかも巻き付く竜は、逃げる方向と逆に引っ張るものだから、失速も甚だしい。
『ウガァァァアアアアッ!! ウガッ!! ウガッ!! ウガガッ!!』
焦りの唸り声。
それを聞いた嵐さんは「ク、クマちゃん、ごめんね」と呟きながらコントローラーを指で弾く……と、連動した社長が声を大にこう言った。
『あの野郎、往生際が悪いなぁ! オイィ! リュウコォ! 遊びは終わりだぁ! コッチに連れて来いぃ!』
反応したのはもちろん、社長の式神である赤い竜だ。
てかあの竜は女の子だったのね。
名前が”リュウコ”って……まんまだな。
その赤き竜のリュウコちゃん、社長の命を受けると、鱗煌めく長い身体を更にクマに巻き付けた。
グル……グルグル……グルグルグル……
『ウガ……ガ……ウゥ……』
な、なんだか苦しそうだな……無理もないか、全身ガッチリグルグル巻きだもの。
しかも、動けば動くほど締め付けが強くなるようで、最初こそ出ていた声も切れ切れになってきた。
それにしたってスゴイ絵だ。
黒いクマの霊体を赤い竜が締め上げているのだ。
二体とも巨大すぎて、見上げる首が痛くなる。
リュウコちゃんはバッドベアーを巻いたまま宙を舞う。
ユラリユラリと優雅な動きで、こちらに向かっているところだ。
これで後はクマから話を聞きだせばいい。
確かに悪い事をしたのだけれど、ぜんぶがぜんぶクマが悪いとは言い切れないのだ。
だからじっくりと話したい。
嵐さんは、ここでようやくコントローラーを持つ手をおろした。
操作中の凛々しい顔から、元の恥ずかしがりの顔に戻るも、変な緊張はないように見える。
社長とジャッキーさんはというと『『せーのっ! 最初はグーッ! じゃんけんポンンンッ!!』』と荒ぶった様子でジャンケンをしていた。
「えっと……あの二人はなんでジャンケンに熱くなってるの?」
ポカンとしつつ嵐さんに聞いてみると、
「あれはね、次の現場で接近戦になった時、攻撃の先行、後攻を決めてるんだよ。最初の頃、二人とも『先に行きたい!』って譲らないから、それならジャンケンで決めればって言ったの」
なるほどね、そういうコトなんだ。
てか二人とも先に行きたいんだな、オリジナルと一緒で血の気が多いわ……なんて思っていたら。
『勝ったーーーーーっ! 次は自分が先に行かせてもうらう!』
『ま、負けた……クッソー! オイ、ジャッキー! 一発で仕留めるなよ!』
あらら、社長は負けちゃったのね。
しかし仲良いなぁ。
社長とジャッキーさんだけじゃなく、嵐さんと三人で仲良しなんだよな。
なんだかちょっとヤキモチやいちゃう……あ、そういえば。
「ねぇ、嵐さん。キャラの社長とジャッキーさん。オリジナルとほぼ一緒だって言ってたよね? なのになんで僕のコト知らないの? さっき『おまえ誰?』って言われてさ、正直……淋しかった……」
社長とジャッキーさんの他人行儀な態度に、僕はすこぶるハートブレイクなのだ。
「あ……ごめん。ボク、岡村さんに会うの今日が初めてでしょう? 昨日までどんな人か全然知らなかったから……キャラ二人に岡村さんの情報が入ってないの。この現場が終わって家に帰ったらアップデートしとくからね。そうすれば次回からは岡村さんのコトもわかるから安心して」
「わぁ、ありがとう!」
そうか、そういうコトだったんだ。
キャラ二人を構築してるのは嵐さんだもんね。
その嵐さんが僕を知らなかったんだ、そりゃアップデート出来る訳ないよ。
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