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それからチビクマは、堰を切ったようにしゃべりだした。
『なぁオマエは言ったよな? オレだけが悪いんじゃないって、ありがとよ、でもなちょっと違う、オレはちっとも悪くない、悪いのはぜんぶみどりだ。だから呪った、憑りついてやったんだ。みどりのヤツ、おかしかったぜ? ちょっと脅せば、ガタガタ震えて怯えてた。脅したくらいで大袈裟だよ。だってオレはみどりの腹を裂いてない、アイツはちっとも痛い目に遭ってない、なぁオレ優しいだろ? そう思わないか? なぁ、なぁ、なぁ! オマエだよ! オマエも! オマエも! オマエらみんな、黙ってないで何とか言えよ!』
フワフワのモコモコの、可愛い容姿に反する口汚さ。
僕はチビクマが悪態をつけばつくほど悲しくなった。
淋しい、悔しい、辛い、と、心の叫びが聞こえるような気がしてならなかったんだ。
『……フン、みどりは口ばっかりだ。「悪かった、許してください」そう言ったけど、それは自分の身が大事なだけ。オレに悪いなんて思ってない、その証拠にオレを探さなかった。探しもしないで祓い屋を雇いやがった。魂胆はみえみえだ、オレを始末するつもりなんだよ。勝手だな、もとはと言えばみどりが悪いのに被害者ツラしやがって。
なぁオマエらもそう思わないか? みどりは嫌なヤツだって。
なぁ……なぁ……チッ! なんだよ! 答えろよ、黙るなよ、なんとか言えよ!
それともなにか? オレが悪いって言うのか? オレを責めるのか? オレを消すのか? さっきは俺だけが悪いんじゃないって言ったじゃないか! ……ああそうか……もしかしてそうだよな、オマエらは人間様だもんな、なんだかんだ言ったって、みどりの味方か、オレなんかどうだっていいのか、
人間よりも下だと思ってるんだろう、所詮安い縫いぐるみ、しかも本体は雨と泥でグチャグチャだから。
そうだよ、さっき視ただろう? ボロボロで汚いと思っただろう? 触りたくもなかっただろう?
……フン、これでも昔はキレイだったんだ。オレが少しでも汚れると、るりはお湯でしぼったタオルで拭いてくれたからな。
るりはいつでも笑ってたよ、「カワイイねぇ、ずっと一緒にいようねぇ」ってオレを撫ぜてくれた。あったかい手で何度もな。
ああ……嬉しかったなぁ……幸せだったなぁ……ずっと一緒だと思ってたのになぁ…………るり……るり……ああ……るりに会いたい……るりに抱っこされたい……笑顔が視たい……
ああ……だけどるりはいなくなっちゃった、遠くへいっちゃったんだ。
もう二度と会えない、』
一気にしゃべったチビクマは再び沈黙した。
力なくクタっとして、まるで魂が抜けたようだった。
チビクマが心の内を吐き出す間、僕らは全員なにも言えなかった。
十年も生者に憑りつき苦しめたバッドベアー。
そうなんだけど……それは事実なんだけど、それでもこんなの、一体誰が責められようか。
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