第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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僕の腕からおろされたチビクマは『いいのか? 逃げるかもしれないぞ?』と戸惑い動けないでいた。 大丈夫、信じてる。 自分を消してくれというキミが、逃げて悪さをするはずない。 『兄ちゃんマジかよ。それ、アレだろ? 今、その霊力(ちから)使うのか? ははっ! コイツ面白れぇなぁ!』 社長は僕を指さしゲラゲラと笑う。 何をしようとしてるのか、わかったんだろうな。 精神の集中が高まってきた。 湾曲させた両手の中に、大福と同じ雪色の電気が溜まっていく。 それはとっても温かく、柔らかな光を放っていた。 「おいで、」 チビクマにそう声を掛け、光の中に入れてやる。 『なんだ……これ……』 チビクマは縫いぐるみだ、温泉に浸かった事などないだろう。 それでも気持ちがいいのか『ほへぇ』なんて間抜けな声で脱力してる。 雪色の電気がいっぱいになり、霊力(ちから)が満タンになるのがわかる。 ここだ、このタイミングだ。 僕はチビクマに向かってこう言った。 「イタイの全部、宇宙の彼方へとんでいけーっ! ついでに僕の霊力もあげちゃうからー!」 癒しの言霊。 使うのは三回目だ。 斎藤様を脅かす悪霊を回復させるのはダメなコト。 そう、本当の悪霊ならね。 だけど違う。 脅しはしたけど斎藤様に怪我をさせた事はない。 チビクマには1ダースの言い分がある、根っからの悪霊じゃあないんだ。
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