2367人が本棚に入れています
本棚に追加
徐々に強まる霊力の中で、眩い光がチビクマの輪郭を消し去った。
術者の僕も目がまぶしくて開けていられない。
それから数十秒。
まぶたに透ける光が弱まり、僕はそっと目を開けた。
そこには、短い手で自分の霊体何度もさわって『お……お……』と漏らすチビクマがいた。
『お……お……おいおまえ……なにをしたんだ、霊体がすごく……楽になったし元気になった、』
「そっか、よかった。癒しの言霊っていうんだ。疲労回復から霊体の不調まで、だいたいは治しちゃうし、しばらく動けるだけの霊力も送った。これでお姉さまの髪が無くなっても大丈夫だよ」
『お、おまえ……オレを救ったのか……? 正気か? みどりになんて言うんだよ? おまえ……いや、おまえたち、怒られるぞ?』
チビクマは僕と嵐さんとキーマンさん、それから社長にジャッキーさんを順番に視る。
小さな霊体が子犬のように震えてる。
チビクマに何をしたのか、チビクマが何を言っているのか、僕がキーマンさんに説明している間、嵐さんがチビクマに話しかけていた。
「そうだね、怒られちゃうかも。……やだなぁ、こわいなぁ。ねぇ、クマちゃん。ボク達が怒られないように協力してくれない? クマちゃんが斎藤様に憑りつくのをやめてくれたら、きっと怒られないと思うんだ」
優しい話し方だ。
ゆっくりとして声のトーンは少し高め。
オレンジ色の髪が風に吹かれて揺れている。
『……フ、フン。し、仕方ないな。最近みどりに飽きてきたところだったし、それに……霊体が元気になったから、るりを探しに行ける。この霊体じゃあ、るりに気付いてもらえないけど、顔が視れたらそれでいい』
チビクマは恥ずかしそうに、でも弾んだ声でそう言った。
良い意味で、斎藤様への興味が薄くなったように思える。
気持ちはお姉さまに向いている。
最初のコメントを投稿しよう!