第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ キーマンさんのセーフティドライブで斎藤様のオウチまで戻った僕達は、大きな門扉の前で再びインターホンを鳴らした。 時刻は夕方。 お夕飯の支度だろうか。 お魚の焼ける香ばしい匂いが、ほのかに外まで漂っている。 あぁ、おいしそうな匂いだなぁ。 実家でもこのくらいの時間には、母親が台所に立っていたっけ。 懐かしいなぁ。 少し待って、玄関の扉がガチャリと開いた。 顔を出したのはエプロン姿の斎藤様だ。 「はぁい、あ……鍵さん……みなさんも……どうぞ入っていらして、」 手招く斎藤様は夕焼けに染められて、まるで薄い炎に包まれているように見えた。 笑顔を向けてくれるけど、その表情は長年の疲れが蓄積されている。 ああ、どうか今日で呪いから解放されますように。 斎藤様も、チビクマも、自由になれますように。 心の中で祈りながらオウチの中におじゃました。 キーマンさんを先頭に、(らん)さん、僕の順で、霊体のチビクマは僕の腕に抱かれながら、通されたのはまたも応接室だった。 ”おかけになって”と斎藤様は言うけれど、今の僕達は泥だらけ。 革張りのソファは白くてキレイで、座ったら汚してしまうのではと躊躇した。 斎藤様が人数分のお茶を持って再び部屋に入ってきた時、立ったままの僕達を見て「お気になさらずお掛けになってください」と言ってくれ、おずおずとソファに腰掛けた。 「……それで……見つかったのでしょうか?」 心なしか声が震えている。 チビクマは僕の腕の中でジッと斎藤様を見つめていた。 答えたのはキーマンさんだった。 「オフコース。フォレスト()の中のビッグツリーのアンダーだ。泥と雨水でぐちゃぐちゃな状態でベアーはいた」 そう聞いた途端、斎藤様の、ただでさえ悪い顔色がさらに悪くなった。 膝に置く手がガタガタと震えだす。 「……そ、そうですか……それでみなさんも泥だらけなんですね……た、大変でしたよね、ありがとうございます、…………」 「ノープロブレムだ、みどり。これが俺達霊媒師のジョブ(仕事)だからな。それで、セカンドリクエストである、今のベアーの状況だが、」 キーマンさんの説明に、僕と(らん)さんは黙って横で聞いていた。
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