第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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同時、膝に座るチビクマの『……フン』という、ひねた声が聞こえてきた。 僕はそれには答えず、無言でその頭を撫でつけてやると『バカ、やめろ』と言いながらも手を払おうとはしない。 悪態をついてるけれど、おそらくチビクマは言いたい事がたくさんあって、複雑すぎる心境で、それでいて緊張もしてるんだ。 だからさらにナデナデしてやった、ちょっとでも楽になるように、落ち着くようにと。 斎藤様はそんな僕に気付いたようで、キーマンさんの話を聞きながらチラチラとこちらを見る。 最初は戸惑い遠慮がちに、だが途中から驚愕の色をあらわにさせた。 「あのっ! あ……鍵さん、ごめんなさい。お話の途中なのに……その……岡村さん? さっきから何をしてるんですか? ……手の動きがおかしいというか……そこに何もいない(・・・・・・・・)……はずですよね? それなのに……」 あ……しまった……バレたっぽい。 斎藤様にチビクマが視えないからって油断した。 どうしよ……言うべきか? ここにチビクマがいるって事を。 いろいろあったけど、最終的に僕達霊媒師とチビクマは信頼関係が結べたと思う。 だけど斎藤様にとっては、今だって恐ろしい”カーズベアー(呪いのクマ)”のままだ。 驚かせないように、怖がらせないように、まずは順を追って、キーマンさんから十分な説明をした後で、本当はココいいるんですよと伝えるつもりだった。 でもね、めっちゃ見てる。 斎藤様の目は激しく語っていた。 い、いるよね? なんかいるよね? それってまさか”カーズベアー(呪いのクマ)”なの……? そ、そーなんでしょ!? 的な圧をガンガン感じるんだ……コレ、ごまかしきれないかも。 スリーマンセルのリーダーと、オレンジ髪の優しい先輩を順に見た。 二人とも「もー」みたいな顔で僕を見て、それでもウンと頷いてくれた。 腕の中のチビクマを覗き込めば『マヌケなヤツ』とぼやいてる。 ははは、ごめん。 本当にそう思うよ。 ダメ、隠しきれないや。 でもさ、遅かれ早かれ本当の事を話すんだ。 「斎藤様、」 僕は依頼者の名前を呼んだ。
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