第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ スッと深く一呼吸。 慎重に話す必要がある。 憑りついたチビクマと憑りつかれた斎藤様。 被害者と加害者の対面だが、そのどちらの立場でもある両者なのだ。 おそらく互いにそれは分かっているはず。 だからこそ落としどころはあるのだが、だからこそ拗れる可能性もある。 「……斎藤様、クマの話をする前に、最初に申し上げたい事があります。僕達は林でボロボロになったクマを視つけました。そこでいろいろあったけど……たくさんの話をしたんです。この十年、どういう気持ちで斎藤様に憑りついていたのか、お姉さまと離れてどれだけ淋しかったか、そういった事ぜんぶです。それによって呪われた側の斎藤様の気持ち、呪った側のクマの気持ちの両方を知る事が出来ました。その上で僕達が願う事、それは ”長かった呪いからの解放”です。斎藤様はもちろんですが……クマも一緒にです、」 膝の上のチビクマの、小さな手を握りながら僕は斎藤様を真っすぐに見た。 その斎藤様は、チラリと目線を下にさげ、そしてすぐに僕を見て小さく頷いた。 ここまでは……いいかな。 「斎藤様のおっしゃる通り、クマは今ココにいます(・・・・・・)。彼は僕の膝に座わり、斎藤様を視ています。……あ、大丈夫、怖がらないでください。クマはもう悪い事はしませんから」 ”ココにいる”、と言った瞬間、斎藤様は身を固くした。 揃えた膝が震え、涙目になっている。 そんな斎藤様を安心させる為にもチビクマに、 「そうだよね? 悪いコトしないよね?」 と声をかけるも、 『フン、それはどうかなっ!』 そう悪態をつき、僕はギョッとした。 斎藤様にチビクマの姿は視えないけど、声は聞こえるんじゃなかった!? 今のを聞いたら拗れちゃうよ! と心配したのに、 『ダイジョブだ、みどりには聞こえてない。オレの声は聞かせようとしなければ届かない』 ボタンの目で表情は薄いけど、今このクマは絶対ニヤリとしてる。 そんな空気で視上げてる……って、僕をからかったんだね? チビクマめ……まんまと騙された腹いせに丸い脇腹をコチョコチョすれば、 『ぬははははは! 悪かった! 悪かったから!』 と身を捩り、ゴメンゴメンと言ってくれた。 うん。 チビクマ、大丈夫そうだな。 冗談が言える程度に落ち着いている。 お願いだからこのままでいてね。 僕はキミに乱暴な事をしたくないんだ。
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