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林の中でのチビクマ。
彼は残り少ない霊力を使って巨大化した。
斎藤様が雇った霊媒師共にタダではやられないぞと、消滅覚悟で向かってきたのだ。
小さな縫いぐるみのチビクマは、女性の髪で思いがけず膨大な霊力を得た……のだが、彼の凄い所は得た霊力を持て余さずに使いこなした事だ。
十年の年月がそれを可能にしたのかもしれないが、霊力だけでも技量だけでも、ああは出来ない。
その両方が揃い、尚且つ、縫いぐるみながらにセンスがあったのだろう。
だからこそ、僕に死を覚悟させる攻撃を仕掛ける事が出来たのだ。
とは言ってもチビクマに殺意なんてなかったんだけどね。
ただ、
『シッコをチビるくらい脅かしてやろうと思ったんだ』
と子供のようなコトを言い、そしてシュンとしながら、
『まさかオマエがオレに触れるなんて思わなくて……』
と僕に謝ってくれたんだ。
いいんだよ、知らなかったんだから。
嵐さんの永久指名プレイヤー、式神の社長とジャッキーさんが助けてくれたし。
てか、筋骨隆々ブラザーズにおつりがくるほどボコボコにされてたもんねぇ。
や、なんか、かえってごめんよ。
あの戦いでチビクマの残り霊力は、スッカラカン寸前になったのに、あのまま放っておけば呪うどころか、動き回る事も出来なくなるはずだったのに……それを全回復させたのは僕だ。
女性の髪同様、霊媒師の霊力で満たされた彼は今、悪い事をしようと思えばいくらでも出来てしまう。
そう、僕がチビクマを抱いているのは万が一の保険。
疑う訳じゃないけど、彼が負った心の傷は相当だ。
実際に経験したんじゃない僕には想像しか出来ないけど、それでもその辛さは容易に流れ込んでくる。
落ち着いたと思われるクマが、斎藤様を目の前にやっぱり許せないと暴れだしたら……その時は僕が霊力ずくで抑えなくてはならない。
抱っこのチビクマはモコモコのフワフワでとても小さい。
口はワルイけど心は違う。
根っからの悪い子ではないんだ。
これから待ってる幸せのために、お願いだから冷静でいてね。
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