第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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林の中でのチビクマ。 彼は残り少ない霊力(ちから)を使って巨大化した。 斎藤様が雇った霊媒師共にタダではやられないぞと、消滅覚悟で向かってきたのだ。 小さな縫いぐるみのチビクマは、女性の髪で思いがけず膨大な霊力(ちから)を得た……のだが、彼の凄い所は得た霊力(ちから)を持て余さずに使いこなした事だ。 十年の年月がそれを可能にしたのかもしれないが、霊力(ちから)だけでも技量だけでも、ああは出来ない。 その両方が揃い、尚且つ、縫いぐるみながらにセンスがあったのだろう。 だからこそ、僕に死を覚悟させる攻撃を仕掛ける事が出来たのだ。 とは言ってもチビクマに殺意なんてなかったんだけどね。 ただ、 『シッコをチビるくらい脅かしてやろうと思ったんだ』 と子供のようなコトを言い、そしてシュンとしながら、 『まさかオマエがオレに触れるなんて思わなくて……』 と僕に謝ってくれたんだ。 いいんだよ、知らなかったんだから。 (らん)さんの永久指名プレイヤー、式神の社長とジャッキーさんが助けてくれたし。 てか、筋骨隆々ブラザーズにおつりがくるほどボコボコにされてたもんねぇ。 や、なんか、かえってごめんよ。 あの戦いでチビクマの残り霊力は、スッカラカン寸前になったのに、あのまま放っておけば呪うどころか、動き回る事も出来なくなるはずだったのに……それを全回復させたのは僕だ。 女性の髪同様、霊媒師の霊力(ちから)で満たされた彼は今、悪い事をしようと思えばいくらでも出来てしまう。 そう、僕がチビクマを抱いているのは万が一の保険。 疑う訳じゃないけど、彼が負った心の傷は相当だ。 実際に経験したんじゃない僕には想像しか出来ないけど、それでもその辛さは容易に流れ込んでくる。 落ち着いたと思われるクマが、斎藤様を目の前にやっぱり許せないと暴れだしたら……その時は僕が霊力(ちから)ずくで抑えなくてはならない。 抱っこのチビクマはモコモコのフワフワでとても小さい。 口はワルイけど心は違う。 根っからの悪い子ではないんだ。 これから待ってる幸せのために、お願いだから冷静でいてね。
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