第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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暴れるチビクマを抑える僕の隣で、(らん)さんが声を上げた。 林の中、キーマンさんと僕の三人の時は、けっこう話してくれたけど、今ここには斎藤様がいる。 この状況で(らん)さんが声を出す事は、相当勇気が必要なはずだ。 それでも彼はつっかえながらもこう言ってくれたんだ。 「ク、ク、クマちゃんっ! そ、そ、その、いるよっ! クマちゃんの言う、『知りませんでした、ごめんなさい』で許してくれる人! その人連れてきたら、ゆ、ゆ、許してくれるんだよね?」 (らん)さん、耳が真っ赤だ。 かなり緊張してるだろうに頑張ってくれている。 一方、チビクマの温度は下がらない。 『ああ、許してやるさ! だけどな! そんなバカいるわけないだろ! 連れてこれるモンなら連れて来い!』 「わ、わかった、約束だからね! ほ、ほらいるよ! ココに!」 『どこだよ! いい加減な事言うな、オレンジ髪! オレが縫いぐるみだからってごまかせると思うなよ!』 「ご、ごまかさない! そ、そんなコトしない! ク、クマちゃん忘れちゃったの? さっき! クマちゃん、岡村さんに謝ってたよ、『まさかオマエがオレに触れるなんて思わなくて……』って!」 ピタ チビクマの動きが止まる。 …… ………… ………………「『 あ、』」 僕とチビクマの声が重なった。 あーうん。 それ、僕がチビクマに言われたコトバだ。 霊体に干渉可能な事を知らなかったチビクマが、巨大化バージョンで僕を潰そうと(どうせすり抜けると思ってたらしい)したのを謝ってきた時、僕は「いいんだよ、知らなかったんだから」で終わらせたんだ。 あのまま当たってたら僕は今頃、死者になっていた。 チビクマも思い出したのか暴れるのをやめた。 そしてゆっくりと僕に振り返り、 『バカ……ここにいた』 と、すこぶる失礼なコトを呟いたのだ。
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