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「や、約束だからね、ゆ、許してあげて」
ソファから降りた嵐さんは、床に膝をつけてチビクマを視る。
触る事は叶わなくても、チビクマの丸い手に自分の手を添えて、真剣な顔で向き合っていた。
『……フ、フン! オレは未遂だ!』
「そ、それは……! 社長とジャッキーさんがとめたからでしょ?」
「うっ…………ま、まあ、そうとも言う。……うぅぅ……うぅぅ……仕方がない……約束は約束だ、……だけど! 全部じゃないぞ! 許すのはおなかの事だけっ!』
いやぁ……危なかった。
霊体に干渉可能なコトを知らなかったチビクマを、もちろん責めるつもりはなかったけど、冗談でも「許してあげなーい!」なんて言ってたら、こうはいかなかったよ。
てか、ホントは冗談言おうと思ったのよね。
「許さーん! 死ぬトコだったんだぞー」って笑いながらさ。
でも……社長とジャッキーさんにボコボコにされたチビクマに悪いかなぁって、なんとなくやめたんだ。
ふぅぅ!
やめて良かった、結果オーライ。
事の経過を斎藤様に説明すると、少しだけホッとした顔になる。
今度はチビクマに斎藤様の十年間と気持ちを伝えた。
「斎藤様はね、ずっと悔やんでいたんだ。お姉さまに嫉妬した事も、呪った事も。呪うって言ったって、本気じゃなかった。お姉さまに何かあって一番悲しむのは斎藤様だもの」
『……うん』
「それにね、チビクマを探しに行こうとも思ってたんだよ。だけど……怖くて行けなかった。チビクマは『そんなの知らない』って言ったけど、斎藤様はか弱い女性だもの。そこはわかってあげてほしいな。ん……だってね、もしもだよ? お姉さまが怖くて動けなくて泣いていたとして、それを他の誰かが責めたら嫌じゃない?」
『……やだ』
「うん……やだよね。斎藤様はチビクマを探したい気持ちはあったんだ。でもすごく怖かった。……そこは……わかってくれるな……?」
『…………うん』
「……ああ、そんなに俯かないで。責めてるんじゃないの。『許せない』ってなるくらい辛かったんだよね。チビクマ……ごめんね。僕達、もっと早く出会えたら良かった。そしたらもっと早く助ける事が出来たのに……ねぇ、チビクマが一番悲しくて許せなかったのは、おなかを裂かれた事? それともお姉さまと離れた事?」
『……りょうほう。でもおなかは許す。オマエが治してくれたし、オレンジ髪との約束だから』
「そっか、おなかは許してくれるのか。ありがとう。……だけど……お姉さまの事は許せないかぁ……そうだよね、離れたくなかったよね……でもさ、斎藤様にお願いしたら、きっとお姉さまに連絡を取ってくれるよ? そうしたら会えるよ、また一緒に暮らせる」
『……うん、そうだよな』
「過去は……頑張っても変えられない。だけど未来は変えられる。なぁんて。これは僕らのリーダーの言葉だけどね」
僕は言いながらキーマンさんを見た。
チビクマも視線を追う。
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