第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ 「鍵さん、岡村さん、深渡瀬さん。本当にありがとうございました。これ……よかったら帰りの車で召し上がってください」 お見送りに来てくださった斎藤様は、そう言って大きな紙袋を渡してくれた。 受け取った瞬間、おなかが鳴るほどおいしそうな匂いがして、それがお弁当なのだとわかった。 「ワオッ! サンクス! こいつは最高のドライブになりそうだぜ!」 とキーマンさん。 僕も(らん)さんもお礼を言いつつ、二階の窓から「バイバーイ!」と手を振りまくる双子ちゃん達に「バイバーイ!」と返した。 「ご、ごめんなさいねぇ。最後まで双子が騒がしくって」 恐縮する斎藤様だが、その顔は曇りが取れたように見える。 ああ……斎藤様は解放されたんだな。 チビクマは……100パー納得とまではいかないだろうけど、 『なぁなぁ! みどりの挨拶なんてそのくらいにして早く行こうよー!』 とはしゃいでる。 「姉にはさっき連絡しました。すぐにでも待ち合わせしたいそうです。それで姉に鍵さんの連絡先を教えてもいいでしょうか?」 あ、もう連絡とってくれたんだ。 お姉さまもチビクマに会いたがってるみたいだし良かった。 「オフコース! プリティベアーをビュリフォーベアーにチェンジしたら、シスターのところまで送る。それまでいい子で待っててもらおうか」 グッと親指を立てたキーマンさんが歯を見せて笑う。 その後ろではチビクマが『はーやーくー』と大騒ぎだ、落ち着けクマ太郎。 「ありがとうございます。あの……鍵さん、ルミの事、どうぞよろしくお願いします。キレイにしてあげてください」 ペコっと頭を下げる斎藤様だが、”ルミ”って……もしかして、チビクマの事? 「あの! 斎藤様、”ルミ”ちゃんってクマの名前ですか?」 気になって聞いてみる、と。 「そうです。るりの”ル”とみどりの”ミ”で”ルミ”。るりが付けた名前です」 へぇ~可愛い名前じゃない。 聞いた僕達三人と猫又とで、揃ってチビクマを視ると、 『みどり! 余計なコト言うな! オレ、男なのに女みたいな名前でちょっと恥ずかしいんだよ、……なんだオマエら……なに笑ってる!』 とテレテレだ。 ふふふ、可愛いな。
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