第十九章 霊媒師 入籍

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オーオッ!(♪) オオオオオッ!(♪) オーオオオオオオーッ!(♪) アイアーンマッソーッ!  ストローングッビーストーッ! 格闘界のキング オブ キーングッ! 最強クイーン、バッドアッポーに首ったけ! 俺の名は大和ーッ!!! さあ、さあ! 早く起きないと“ジャーマン・スープレックス”をかけるぞっ! デンジャー! デンジャー! デンジャー! …… …………カチッ、 枕元で鳴っていた目覚まし時計を止め、眠い目を擦りながらモゾモゾと起き上がる。 時刻は朝の5時半。 私は一度止めた目覚まし時計のスイッチをもう一度押した。 このままにしておくとスヌーズ機能でまた鳴り始めちゃうもの。 助かるなぁ。 低血圧で朝に弱い私でも、この目覚まし時計なら起きられる。 外見(そとみ)は派手な赤色、文字盤はチャンピョンベルトを着けたお義父さんがファイティングポーズをとっていて(左手にはリンゴを持ってる)、なんでもこの時計はプレミアグッズというものらしい。 プロレスラー現役最後の試合では、東京ドームを観客でいっぱいにしたお義父さん。 その時限定で販売された目覚まし時計は、今では十倍以上の値段がついている。 ____目覚まし時計が壊れたのかい? ____お義父さんのでよければあげるよ。 ____押し入れにしまいっぱなしだったけど使えるはずだ。 わぁ、ありがとうございまーす、なんて気軽にもらっちゃったけど、まさかそんなすごい時計だなんて思いもよらず…… 「…………ふはははは、世の中のお嫁さんのうち一体何人が【お義父さんのプレミアグッズ(・・・・・・・・・)】で朝起きるんだろう? もしかして、私だけだったりして」 誰もいない部屋の中、ついつい一人で笑ってしまう。 けど、笑ったら目が覚めてきた、さあ、起きよう。 着替えて顔を洗ったら朝ごはんを作るんだ。 鮭を焼いて、お味噌汁は豆腐と長ネギ。 あと納豆と卵は欠かせない。 だってね、良質なたんぱく質は良質な筋肉を造るんだもん。 その前に……私はベッドから降りて窓にかかるカーテンを開けた。 わぁまぶし、今日はいい天気だな。 そのまま窓を全開にすると、目の前には広い庭。 芝生の青が爽やかで、6月の蒸し暑さもこの時間ならおとなしい。 そして……あ、いた…… 庭の真ん中では、マコちゃんとお義父さんが毎朝の日課、組手試合をしていて大きな身体同士ぶつかり合っている。 ああ……どうしよう……今日もカッコイイ……! 全身の筋肉が鎧みたい……スキンヘッドも神々しいし……整いすぎた顔は黙ってるとクールなのに笑うと優しいの……ああ、だめ……朝からドキドキしちゃう……! 初めて会った時からカッコイイなとは思ってた。 だけどまさかこんなに好きになるなんて思ってもみなかったの。 マコちゃんはカッコイイだけの(ひと)じゃない。 優しくて強くてユーモアがあって大人で車の運転が上手で……それから……それから……まだまだいっぱいあるよ。 ぜんぶ言ったら少なくても3日はかかる。
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