第十九章 霊媒師 入籍

5/102
前へ
/2550ページ
次へ
ふははは、出た。 この二人、目玉焼きを出すたびに、なにをかけて食べるかで口喧嘩が始まるの。 これを何度見た事か……ああ、でも、この感じは懐かしいなぁ。 私と爺ちゃんもそうだった。 目玉焼きに何をかけるかでしょっちゅう言い合いをしてたっけ。 婆ちゃんは「なにをかけてもいいから、いっぱい食べてちょうだい」って笑ってた。 毎日揃ってゴハンを食べて、私は爺ちゃんと婆ちゃんに学校であった面白いコトをみんな話したんだ。 すごく楽しかった、幸せで、安心出来て、ずぅっと田舎で暮らしたい、東京なんて絶対に行きたくないって思ってた。 爺ちゃんと婆ちゃんは年だけど、きっと百歳こえても元気でいてくれる、ずっと三人で暮らしたい、結婚なんてしなくていいって本気で思ってた。 それなのに……今の私、昔の私が見たらびっくりしちゃうだろうな。 爺ちゃんと婆ちゃんが死んじゃって、爺ちゃんの願いで東京に出てきて、思いがけずママにも会えて、そして……マコちゃんにも逢えた。 結婚なんてしなくていいと思っていたのに、私はマコちゃんの奥さんになる。 こんなに優しくてカッコイイ人が私を選んでくれるなんて夢みたい。 目の前で醤油とソースで喧嘩する、最後は笑って終わりになる、にぎやかで、楽しくて、幸せで、こんなにも安心出来る食卓なんて、もう二度と着けないと思ってたのに。 マコちゃんもお義父さんもすごく優しい。 私は二人に大事にされている。 私も二人を大事にしたい。 幸せな気持ちに浸りながら、自分の目玉焼きにケチャップをかけた。 醤油とかソースとか、どっちもおいしいと思うけど、私は昔からケチャップ一筋。 一口食べればやっぱりおいしい。 うん、ゴハンを食べたらドキドキがおさまってきた。 いっぱい食べて、マコちゃんに心配かけないようにしなくっちゃ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2366人が本棚に入れています
本棚に追加