第二章 霊媒師面接

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『よし、わかった! 岡村君、ここに座って! 今から職務経歴を霊視させてもらうよ!』 先代はそう言って僕の背中をぐいぐい押して事務椅子に座らせた。 霊視!? 僕、今から霊視されちゃうの!? どうしよう……すごく緊張してきた……! そんな気持ちを見抜いたのか、清水さんが僕に声を掛けてくれた。 「顔色悪いけど大丈夫? 緊張してるのかな? よし、ここはひとつ俺がリラックスさせてあげるから。なに、今あるストレス以上の負荷を与えれば問題解決だよ」 と笑ったかと思ったら、グルングルン僕ごと椅子を回転させはじめた! ちょーっと! なにするんですかー! こんなんでリラックスー? できないよー! できる訳がないー! やめてー! ちょっと酔いそー! 内心動揺しまくりだが面談の場で文句も言えず、僕はひたすら椅子回転に耐えた。 『じゃあ、始めるけど気楽にしてね。見るのは職務経歴だけでプライベートな事は覗かないから大丈夫だよ!』 「あーーーーはぃぃ、ょぉぉろしくお願いします……だぁぁぁけど、僕どうしたらぃぃぃのでしょうかぁぁ?」 僕を思って(?)の、清水さんの椅子回しに加速がついたせいだろうか? 心なしか僕の声にドップラー現象が出始めた。 『何もしなくて大丈夫。ただリラックスして座っているだけで良いから……って清水君!こんな時に悪ふざけはヤメテ! ジャマ!』 先代の一喝でやっと止まった椅子の上、確かに緊張は解けたけど、それ以上に乗り物酔いに似た吐き気に襲われクラックラだ。 清水さんは「な! リラックスできただろ?」と親指を立ててるが、なんかちょっと問題解決の方法が間違っている気がする。 そうこうしているうちに、先代がテレビで見た催眠術よろしく僕の額に手をかざしてきた。 なにやらブツブツと呟いているが内容までは聞き取れない。 やがてウンウンと頷きながらゆっくりと僕の職務経歴を語りはじめた。 『……大学卒業後……新卒で××通信社に入ったんだ……そこで3年間……営業職を……ああ大変だったねぇ。取引先の会社さんで……クレームかな? すごい怒鳴られてるじゃないか……ああ、でも……うまいね、すっかり丸く収めてさらなる契約を取っている……お、その後の5年間は同じ会社のお客様相談センターに配置換えか……まあ、あれだけ客あしらいがうまいなら適所だが……おぉ……! 去年主任になったんだねぇ……おめでとう……あ、でも……あら……あららら……会社が不渡り出しちゃったのか……それで……××通信社……頑張ったけど……潰れちゃったんだねぇ……そうかそうか……』 えっ!? えっ!? えぇぇぇぇ!? ちょっとそんな細かい所まで見えるんですか?! 恐るべし、先代の霊視力……! さっきプライベートな事は見ないって言ってたけど、それ本当ですよね? 見てないですよね? 絶対見ないでくださいね!
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