第十九章 霊媒師 入籍

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「心配か? 悪いな。入社したのが冬だったらもうちっと時間があったのによ。でも大丈夫だ。夏までに全部完璧に、なんて思っちゃいねぇ。ある程度でいいんだ。繁忙期中はジジィに事務所に残ってもらうつもりだからよ、わからない事があれば聞けばいい」 先代が残ってくれるのか……良かった。 それなら心強い……でも。 「あ、あの、私、頑張ります。先代が一緒にいてくれるなら安心だけど、先代ばかりに負担をかけないように覚えます。社長はすごく忙しいのに、その中で教えてくれる事、絶対に無駄にしませんから、…………あ……な、なんかごめんなさい。研修初日でまだなにも出来ないクセに……今の生意気でしたよね、」 またやっちゃった。 真面目に答えてしまった……先輩方のような破天荒さで社長を笑わせたいと思うのに、生意気を言っただけ。 私はやっぱり”ツマラナイ田舎の子供”だ……言ってしまった事が恥ずかしい。 せめてもう少し仕事を覚えてからなら違ったかもしれないのに。 外はすっかり日が暮れて、街灯と道路の両脇に並ぶお店の光、それと信号が眩しいくらいに煌々としている。 その信号が赤になり、社長は静かにブレーキをかけた。 停車中の運転席、前を見ていた横顔がこちらを向く、そして。 「生意気じゃねぇよ。おまえは真面目で一生懸命だな。俺はよ、そういう頑張るヤツが好きだ」 え……? 心臓が破裂しそうだった。 それは少なくても嫌われてはいないって事で……いいのかな。 真面目でも、破天荒でなくても、それでもいいのかな。 そのあと車は走り出し、アパートに着く前に社長と二人でゴハンを食べた。 いっぱい食えって言われたけど、残さないように食べるのが精一杯で、胸がいっぱいで、味なんてちっともわからなかった。
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