第十九章 霊媒師 入籍

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社長が帰った後、もらったペンダントを夢心地で眺めいてた。 チェーンに通してあるのは、キレイなカットの赤水晶。 天井の照明にキラキラ反射して光ってる。 「これには俺の血が沁み込ませてある。ユリ、思業式神って知ってるか? ああ、知らねぇよな。まだ教えてないもんな。思業式神ってのはな、霊媒師の術のひとつで術者の意のままに操れる式神のことをいうんだ。何かあった時、これに向かって名前を呼べば、それが言霊となり、水晶を依代(よりしろ)に式神が出現する。霊感のない生者には視えねぇだろうが、激しいポルターガイストくれえなら余裕で起こせる。ユリに害を成す奴がいれば、それで脅して追い払う。式神が発動すれば離れていたって俺にはわかる。わかればすぐに駆け付けるから、おまえを守ってやるからな」 言われた言葉を何度も何度も思い出す。 思い出してはドキドキする。 ユリを守るから……それが爺ちゃんに頼まれたからだって事はわかってるけど、やっぱり嬉しい。 爺ちゃんの気持ちがありがたかった。 社長の優しさもありがたかった。 ありがたくて、ドキドキして、昨日よりもっと好きになってしまった。 社長の特別になりたいなぁ……だけど無理かなぁ。 守るって言ってくれたけど、でも、きっと、社長は保護者の心境で、悲しいけど、恋愛対象には見られてない。 頑張れば……いつか変わるかなぁ。 仕事を覚えて役に立ったら、一生懸命頑張ったら振り向いてもらえるかなぁ。 社長はどんな女の人が好きなんだろう。 天使みたいな子? それとも女神みたいな人? 社長の事、もっともっと知りたいな。 あ……そういえば……社長のおうちってどの辺なんだろう? アパート(うち)の近くだって言ってたけど市は違う。 確か(オー)市だと言っていた。 ネットで地図を見てみようかな。 えっと……東京都……(オー)市で検索して、 …… ………… ………………え? 私は出てきた地図に釘付けになった。 これ……ぜんぜん近くじゃない。 それどころか反対方向だ。 会社のあるT市を真ん中にしたら右と左でうんと離れている。 T市を出てからアパートのあるH市に来て、そこから(オー)市に帰るには、T市に戻って通りすぎてから行くしかない。 ____遠くねぇよ、 そう言っていたのに、 社長は……嘘つきだ、 だめ……こんなの、どんどん好きになっちゃう、 気持ちが……とめられない、
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