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午前中は質問タイムとなった。
何を何回聞いても答えてくれる。
「わからなければ何度でも聞け。さっきも聞いたのにとか思わなくていい。分からない事を分からないままにする方が問題だ」
そう言ってくれるから、私も遠慮なく聞いてしまう。
実際社長はなんでも知っていた。
社長が社長になる前は霊媒師だったはずなのに、どうして事務の仕事も出来るのか聞いてみると、
「うちは昔から事務が長く続かないんだ。やっぱり幽霊が怖いって辞めるヤツもいれば、日中一人で回さなくちゃならねぇのが辛いって言うヤツもいた。だから辞めるたんび俺が代わりに処理してたんだ。それで覚えた」
そうだったんだ。
社長、大変だったんだな。
ちゃんと研修を受けたんじゃないのに、急遽事務の仕事をしなくちゃならなくて、それでもここまで出来るようになったんだ。
すごいな……私も頑張ろう。
社長がこれから色んな仕事を抱えなくていいように、事務だけは私がぜんぶ引き受けるんだ。
午前中いっぱいかけて、わからない事を潰してもらったおかげで、昨日までの内容はすべて頭の中に入った。
午後からは新しい事を教えてもらう。
休憩をとるのももったいなくて、「そんなにいっぺんに大丈夫か?」と心配する社長に「大丈夫です」と答え、休む事なくぶっ通しで研修を続けてもらった。
時間が経つのが早かった。
夢中になってノートを取って、質問して、話を聞いて、そうこうしてたら終業のチャイムが鳴った。
もう終わり? まだまだ聞きたい事はたくさんあるのに、と、ペンを置かずに社長を見れば、
「ユリ、今日はここまでだ」
そう言って席を立つと、んんーと大きな身体を伸ばしたの。
その姿を見た時、そこでようやくハッとした。
社長……ずっと研修してくれたから疲れちゃったんだ。
”そんなにいっぺんに大丈夫か?” って聞かれたのに、大丈夫だからと休憩も断った。
失敗した……だって私がそうしたら、先生である社長も休めないのに。
それに気付いて、頭を抱えるほど後悔した。
やっちゃったよ、私は人からしっかりしてそうとよく言われるけど、本当はそんな事ないの。
そそっかしいし、あわて者だし、一つの事に夢中になると他が見えなくなってしまう。
爺ちゃんが生きていた頃、それでよく呆れられていたのに……社長の役に立つどころか負担をかけてしまった。
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