第十九章 霊媒師 入籍

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「あ、あの、社長、すみません。疲れちゃいましたよね。私……休憩いりませんだなんて自分の事しか考えてなかったです、」 一人で張り切って、一人で暴走して恥ずかしい。 謝る声も小さくなってしまう。 社長も呆れただろうなって思ったら、顔が上げられなくて俯いた。 なのに、落ち込む私に降ってきたのはゴツゴツの大きな手で…… 「あぁ? んなこと気にすんな。言っただろ? 俺は頑張るヤツが好きだ。ユリが早く仕事を覚えてぇって言うんなら、とことん教えてやるからよ」 そう言って、ワシャワシャと頭を撫ぜてくれた。 そして、 「んじゃあ帰るか、」 社長は言ってからドアに向かって歩き出す。 私は慌ててノートと資料をカバンに詰めた。 今日はとうぜん電車で帰るつもりで、だからせめて玄関までは一緒にいたいと、急いで後を追おうとした。 すると社長が振り向いて、 「ユリ、(わり)い。そこにある俺のジャケット持ってきてくれ」 そう言ったの。 急に言われてキョロキョロすれば……あった。 社長の机にくしゃくしゃなまま置かれた大きなジャケット。 手に取ればそれだけで胸がドキドキしてしまう。 だけど……ドキドキするのはそれだけじゃすまなかった。 「運転中はどうせ着ねぇからよ、車に乗ったらソレ、膝にかけとけ」 え……? それって……また今日も一緒に帰るの……? 社長のジャケット、膝にかけてもいいの……? 「おい、なにボーッとしてんだ。早く帰るぞ」 笑いながら、大股で、ドアを開けて歩き出す。 送ったら遠回りになっちゃうのに……私はそんなことを思うのに、なのに心のどこかで嬉しくて、社長の後を追いかけたんだ。
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