第十九章 霊媒師 入籍

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沈黙が辛かった。 社長はなんて答えるのかな? ううん、やっぱり聞かなければ良かった。 だって……いるよ。 こんなに素敵な人だもん。 社長の動揺が伝わってくる……いつもは堂々としてるのに、ソワソワと落ち着きがない。 ああ、やっちゃった……きっと社長は私のキモチに気付いてしまったんだ。 だけど社長にしてみれば、私は恋愛対象じゃあないし、保護者のつもりでいたのに、こんな事を聞く私を“面倒な子供”だと、困っているんだ。 黙ったままウィンカーを出した社長は左折で大きな駐車場に入った。 そこはスーパーマーケットで、なんでココに? と思いつつも、もう余計な事は言わないようにしようと黙っていた。 夕方の買い物客は、車をなるべく入り口の近くに停めようと考えるのだろう。 少し離れた所なら車はまばらで、社長は人気(ひとけ)の少ない場所に車を停めた。 そしてエンジンを停めると、はぁぁとため息をついた。 「ジジィから聞いたのか? それともエイミーか?」 「…………え?」 「だからよ、俺が前に紹介された女のコト言ってんだろ?」 「紹介……」 やっぱりいるんだ…… 「ったく、あのおしゃべり共が。ありゃあよ、俺とはまったく趣味が合わなかったんだ。一回この車で出掛けたけど、なんもねぇ。それっきりお互い連絡も取ってねぇ」★ え……そ、そうなの……? という事は…… 「じゃ、じゃあ、じゃあ、今、お付き合いしてる女の人はいない……んですか?」 気持ちがスッと軽くなる、それどころかウキウキさえしてしまう(せ、性格悪いかな?)。 社長に特定の女性(ひと)がいないなんて奇跡に等しい。 「ユリはそんなコト気にすんな。おまえは真面目だから、俺にもし女がいたら悪いと思ったんだろ? 大丈夫だ」 そうじゃないよ……ごめんなさい。 もっと不純な理由です。 だけど、社長は誤解してる。 だったらそういうコトにしておいた方がいいかな……? ____違うんです、私は社長が好きなんです と……言えたらいいけど、言ってもし気まずくなったら。 こうやって送ってもらったり、二人でゴハンを食べたり出来なくなってしまったら……それはやだな。 「……そうですか、……良かったです。彼女さんがいらっしゃったら、ジャマしちゃうって心配だったんです。こんな子供のお()りをしてたら会う時間が減っちゃいますもんね。ふはは、ホッとしました」 大丈夫、うまく笑えてる、うまくごまかせた。 ★ちなみに、その女性とのコトを先代がツッコんでいるシーンがココです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=36&preview=1
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